「あれ?」と思ったら即言わないと「カタチ」が悪くなる~リスク管理講座

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他のかたの相談案件やってて、ふとシェアしてもいいなと思ったので書いておきます。海外経験よりも弁護士経験に基づくものですけど。

なんかトラブルがあるとします。
「おい、話が違うじゃないか?」
「あれ、おかしいぞ」
「え、なんでそうなるの?」
ってとき。

その場合は、間髪入れずに言うといいです。
別に「文句」「怒鳴り込み」というほど強いものでなくてもいいし、それですべてを解決しようと意気込まなくておいいけど。一応「異議」「疑問」は言うそしてそれを何らかの形として残しておくとなお良い

なぜか?

トラブル生成のパターン
その後の展開をシュミレートすると、最初は僅かな違いが、ボタンの掛け違いのように後になるほど広がっていく場合が多い。そうなるほど両者の対立は先鋭化するし、解決は難しくなる。

こっちはAだと思い、相手はBだと思い込む。最初は大差なくても、だんだんズレが激しくなる。人間なんか手前勝手なので、過去の記憶も自分の都合の良いように捻じ曲げてしまう場合が多い。「確かにあいつはそう約束した」とか記憶ではなってるけど、リアルな事実としてはその単に「ふーん、そうだっけ」と曖昧な返事をしただけだったりする。でもこっちの記憶としてはそれが「確かに約束した」みたいに整理されてしまう。相手も同じように自分に都合が良いように思い込む。

かくして世の中にはトラブルや紛争が絶えない。
「お前がやれって言ったんだろうが」
「言ってねーよ」
「言ったじゃん!」
という水掛け論になったりもする。

夫婦間でなにかの家事(草むしりとか)をやるときでも、その解釈が微妙に違う。夫は「本来誰の仕事でもないけど、このときは好意で俺がやってやった」と思い、妻は「あれは夫の分担だ」と理解するから、あとで揉める。

そういった亀裂が目に見えた形で出てきたとき、「話が違うじゃないか」「そんなの聞いてねえよ」って紛争になる。

最初の時点で曖昧にしてしまう場合が多いこと
例えば100ドル貸して返してもらう場合に、80ドルしか渡されず、「これでいいでしょ?」って言われると、「おい、ちょっと待てよ、100ドルだろう?あと20ドル足りないよ」って言えばいいんだけど、そこらへんが曖昧になることもある。「とりあえず手持ちの80を返してあとはまたって趣旨かな?」とか、確認もせずに勝手にそう思う。
バイトの時給計算でも、「あれ、おかしいな」ってときに、「なんか変だな」とは思うけど、忙しいから取り紛れるとか、いちいち細かい計算をして問い詰めるのも大人げないなとか思う。

で、いよいよ大喧嘩になって、「この嘘つき野郎が」「てめえだろ?」みたいになった場合、当事者では解決できず、仲裁とか、裁判とか、中に第三者が入って、客観的に経過を追って、「だったら、○○が妥当かな」と仲裁案を出したり、判決を書いたりする。

そうなると何よりも大事なのは、第三者の視点です。
揉めて収拾がつかなくなった時点で、この案件の収束権限は当事者の手を離れる。まったく利害関係のない第三者の手に委ねられる。
ならば、第三者から見て、一連の経過はどのように見えるか?こそが決定的に重要になる。

当然あるべき証拠・行動がない

司法修習などで実際の事件を聞いて、裁判官になりきって自分で判決書いてみってやらされますけど、その事実認定(証拠をつきあわせて多分こういうことだろうという認定)をする場合、決定的なファクターになる要素がいくつかあり、そのなかの一つが、「当然あるべきモノがない」って事実です。

物事には「自然な流れ」というのがあり、それに沿って流れている限り、話は筋は通るし腑に落ちる。多分真実もそうなんだろうなーって思いやすいし、そう事実認定されやすい。
でも、こーなって、あーなってって流れが、途中でブチ切れていると、「あれ?」と思う。

例えば、毎回お金を払うようなときに、いつも領収書を受け取っていたのに、この日に限って領収証が「ない」となると、いくら「払った」と主張しても、また真実払っていたとしても、「じゃあ、なんで領収書持ってないの?」と当然のツッコミをされる。
そして、「本当は払ってなかったんじゃないの?」という推定をされる。

そこで、いやいや、普通にそんな領収書とか全部きっちり保管してるわけないじゃないですか、会社の経理じゃないんだから、取り紛れて捨てちゃったりすることだってあるでしょうが、領収証がない=払ってないとは決めつけられないでしょうが
って反論はしますよ。でも、なんか「弱い」でしょう?いかにも言い訳言ってるみたいだし。領収書が一枚も残ってないなら(全部捨ててる奴なら)まだ話はわかるけど、そのときの一枚だけ無いとかいうのはおかしいぞと。

これは領収書ですけど、「その場で異議を言う」というのもあります。
話が違うじゃんって思った時に、「すいません、ちょっと確認したいんですけど」ってやったり、その挙げ句そこで大喧嘩になったりすれば、ああ、そこで揉めたなってのはあとで認定しやすい。

ところが、忙しいからとか、気が引けるからとか、あとで精算してくれるよとか勝手な希望的な思い込みで何もしないとか、要するに、弱気+面倒臭いが勝って、何もしなかったら、「それで合意した」とあとで思われてしまうリスクがある。

海外よくあるヴァージョン
これは日本の場合よりも海外の場合の方がより激しくある。

第一に、一般にこっちの方がいい加減だから、その種の「あれ?」はよくある

第二に、そこで文句を言えばいいんだけど、英語が不安だとか、上手くいえないとか、険悪なムードになりたくないって腰が引けて、結局何も言わないってパターンが日本人の場合特に多い

第三に、海外、特に欧米人の感覚でいえば、おかしいなと思ったら速攻異議を言う、空気なんか読まずに「あれー?おっかしーなー」と平気で言うのが普通。だから疑問があっても何も言わないってのは、彼らにとってみたら「ありえない」し、理解しにくい。むしろ、何も言わないということだけで(不満を押し殺しているだけで)、それに合意したと思われる。

つまり、「あれ?」と思ったら、そこで異議なり疑問を出すのは、「当然あるべきこと」であり、当然あるべきものが無かったということは、そもそも「あれ?」的な状況ではなかった、それに不満はなかったんだろうという、事実と違う判断をされてしまう。

かくして、「あとで、、」とか言ってるうちに、不本意で理不尽な現実が既成事実化してしまい、後になるほどひっくり返しにくくなる。

だからなんか異議を形として残しておくといい。その場で言えなかったら、せめて24時間以内にSMSで送っておくとか。

ケーススタディとしては、バイトで、時給25ドルくれる、税金引いて22ドルだよというのが最初の約束だった。今週10時間働いたのだけど、220ドルになるかというと、なぜか180ドルしかくれなかった。え、なんでやねん?ってことになるんだけど、、、
文句を言わず、以後、事実上時給18ドル計算でもらい続けていたら、「18ドルの合意があった」みたいに見えてしまうのですよ。てか、それ以外のなにがあるのか?と。

ただ、リアルなケースを考えてみると、最初の時点から英語がわからんのがネックになって、例えば「ある程度やって技術が認められたら最終的には25ドルになるよ」みたいな曖昧な説明をされてたりするわけだし、それを正確にこちらが理解できてなかったりもする。勝手に最初から25ドルと思い込んでぬか喜びするとか。
本来なら最初の時点で、「じゃあ最初は幾らから始まるのですか?」「一般的にいって次の昇給はいつですか」「25ドルになるのはいつくらいですか?」とやっておくべきなんだけど、それを言う英語力がない。また採用された嬉しさと、ここで妙なことを口走って機嫌損ねて採用パーになるのが怖くて、曖昧にしたいするんですわね。

で、給料もらってガビーンとなると。

これを逆算していけば、
(1)最初の時点で聞き取れてない部分があるなら、25ドルとか即断してぬか喜びせずに浮かせておくこと
(2)出来る範囲でいいから、最初の時点でクリアにできることはクリアにすること

(3)ガビーンとなったときに、ちょっとでもいいから何か言う、疑問を発すること
多少なりとも言える範囲で(調べてでも、人に聞いてでも)。間髪いれずに。「間髪」ってどのくらいっていえば、まあ24時間以内かな。

その際の言い方、I just want to make it clear(ちょっとわからないんですけど)とか、My understanding is  (僕の理解によると)とか、やっておくといいです。てか、事前にやるというよりは、事態がこうなったときに、ねじり鉢巻であーうー呻くながら英文を作る。
そのとき英語がうまくなる。
というか、ここでやらなかったら英語が上手くなるキッカケがないから何年住んでも英語力は脳死状態で伸びない。

「カタチ」が悪い

長くなったが、「あれ?」と思ったら、すかさず言うべし。

でないと、後になればなるほど形が悪くなります。
裁判でも紛争処理でもなんでもそうですけど、将棋と同じような感じで、「カタチが悪い・良い」という双方の陣形図みたいなのがあって、カタチが悪くなると、何をどう主張しても「言い訳」「苦しい説明」に聞こえたりします。

リスク管理としては、「あ、カタチが悪くなりそうだな」と早めに気付いて、修正かけることですが、それは中々最初からは難しい。実践的な一口知識でいえば、「即言え」です。

そのために、「カドの立たない言い方」を学んだり。
「失礼、一点確認させていただいてもよろしいでしょうか?」とか。

このあたりの言い回しは、ビジネスとか仕事で覚えるでしょう?
「お言葉を返すようで恐縮でございますが、手前どもの考えによりますと、この点は○○になるかと思われるのですが?なにぶん手前どもも不案內でございまして、誤謬も多々あろうかと思われますところ、それらの点につき明快なご教示賜われたら幸甚に存じます」とか。

このあたりの表現がスラスラ出てくるかどうかが、日本語でも英語でも「言語力」だと思います。

在住日本人のすべての問題は煎じ詰めれば言葉(英語)の問題になるというのは、よく引用する名言ですけど、大体そうですねー。でも、これ日本国内の日本語でも似たような面もあるのですよね。

整理すれば
★他人と対立することから逃げないメンタル
★正確な言語力
です。
これらが弱ければ弱い分だけ、なんだかんだでトラブルも増えるし、損も多いんじゃないかなー。

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