オーストラリアの2025年の連邦総選挙が昨日(5月3日)ありました。
現政権のレイバー(労働党)が維持するか、野党コーリション(連立、リベラルとナショナル)が奪回するかですが、事前の予想はかなり接戦、野党有利かもって感じだったらしいですが、蓋を開けてみれば現政権の圧勝。
Landslide(地すべり的)と形容されるような一方的なもので、野党側の敗北は史上最悪レベルらしく、野党党首のピーターダットンはあろうことか自分の議席すら落選しました。
まだ開票70%くらいなのですが(オーストラリアの選挙システムは超複雑なので=政党に優先順位をつけるなど=、すべてが判明するまでかなり時間がかかる)、70%開票時点でも(てか開票直後にすぐわかったようだが)、大差がついてます。
ところで僕自身は、コロナ茶番以来、オーストラリアの政治やマスコミに愛想が尽きて、ほとんど注目もしてなかったんですけど、ただ、今回気になったのは、自分に関係するエリアで、野党のピーターダットンが更に激しい留学生制限をすると言ってたことです。そうなるとヤだなあ、と。
ダットンが何を言ってたかというと、留学生(大学の)の数をどーんと制限するのみならず、こないだ1600ドルと125%上昇させた学生ビザ申請料をさらに900ドルあげて2500ドルまでにする(有名8大学は5000ドル)、途中で学校を変える場合も新規に2500ドルにするとかです。
これによってオーストラリアの住宅危機、家賃危機は劇的に緩和されるので素晴らしい政策だとか言ってたんですよね。でもボロ負け。こんなんに騙されるほどオーストラリア国民は馬鹿なんかなあ?と思ったら、意外というか案の定というか、そこまで馬鹿ではなかったという。
留学生の激増が賃借市場を圧迫という面は確かにあったけど、前に書いたように学生ビザを値上げしたりビザ審査を絞ったりすることで数の激増は収まり、実際にもシェア空室率やバイト探しも楽になった。だけど、これはどっちかといえば(前に書いたように)金利を下げて住宅流通が回復してきたことが大きい。それにシェアは安くなったとしても、一般の賃貸住宅は全然安くならないのが実証されてしまっている。考えてみれば、一般の賃借の相場は週500ドルとか800ドルとかもっと高い値段の話で、留学生の市場とは関係ないのですよね。
そういうのを国民レベルで毎日切実に学んでるところで、唐突に「留学生を減らして住みやすくする」とか言われても、人気取りの思いつきでしか無いだろ?現状をよく調べて考えていってるわけじゃないだろ?大体お前過去にそんなこと全然言ってなかったじゃないか?と、見透かされてしまったんじゃないですかね。
もともとピーターダットンは、個人的に大嫌いな親父で、時代遅れのイケイケのタカ派で、トランプが出てくる前のアメリカの共和党みたいな感じ。白人バンザイで、有色人種をどっか見下してて、軍産複合体とズブズブで、愛国だ戦争だとわめいては儲けるという。スケープゴートとして社会の弱者を叩いて、それを正義だとして、裏では金儲けをするという、どこの国にも必ずいる連中。アボリジニに対する和解や謝罪の席に欠席したり、難民審査を遠く離れた強制収容所に送るんだとか。彼が内務省時代にやっていた腐敗行為(麻薬業者などと巨額な契約をしてたり、離島の掘立小屋に本社登録している怪しい会社に無競争で入札させてたり)、退任後に暴露されているのだけど、Paladin社などが絡むせいか(新DSとか言われてる)ヤバすぎてメディアもあまり書き立ててない。
だいたい何もしなかったスコット・モリソンがコロナ期を終えて、自身落選するように大敗を喫して、じゃあ次は誰かというときに野党党首になったのがダットンで、いくらなんでも他に人材はおらんのか?と思いました。まあ、おらんのだろうなー。しかし、それにしても自分も落選というのは凄いな。長期政権を終えたあとの選挙で落選するのはよくありますよ。ハワードもモリソンもそうだったし。だけどまだ一期もやってない時点で落選というのは珍しいです。
ちなみにあんまり見てなかったので現職のアルバニーズ(イタリア系なのでアルバネーゼが本家読みだけど、けっこう皆さんいい加減に呼んでるぽい=本人もインタビューで「面倒くさかったら”アルボ”でいいよ」とか言ってる)ですけど、まあこれといった失策もなく、アメリカや中国ともほどほどの距離感でやってて、いいんじゃない?ってことですかね。
彼は、オーストラリアの首相としては初めての非アングロサクソン系らしいです。へえ、ようやく初なのか、このへんが遅れてるところだよねー。ただ、内閣内の女性比率は50%には及ばないものの43%に引き上げ、わりと好感をもたれている。あと、アジア系、ムスリム系などの閣僚もいて、多極世界においてはいい布陣だとは思います。ナンバー2だか3だかのPenny Wongは昔っから堅実な仕事ぶりで、マレーシアの華僑のお父ちゃんとオーストラリア人のお母さんとの間に生まれ、英語はもとり、生まれ故郷のマレー語(の方言)や、中国語(広東方言や客家語)も喋れる。
詳しくはわからんけど、とりあえず学ビザの値上げは避けられたようで安心です(でも、新政権がまたやるかもしれないけどね)。