前回の増原さんの写真紹介の流れで、彼女に紹介した前田くん。最近どんな感じで忙しいの?そういうのってどうやって仕事取ってくんの?と「増原さんにも教えてあげて」といいつ、個人的に聞きたいということもあって、昼飯ご一緒して色々聞いてきました。
彼は今、WH後に学生ビザで滞在、未だにGlebeのYHA(公式にはYHAから外れたが宿として稼働)を拠点として、タスマニアで買った年代物の車を駆ってプロカメラマンとして稼働してます。もうワーカホリック状態らしくて。
WH終わって、こちらでカメラマンとしてどれだけやっていけるか試してみようと思ったときに、密かに立てた数値目標が、仕事を百件以上こなす and/or 百万以上稼ぐ!って野望だったらしいんですけど、これが意外とあっさりと達成してしまい、それからはもう数値とかどうでもよくなってるそうです。
いつも皆を連れて行くPetershamのポルトガルチキンを食べながら聞いたことをまとめていくと、、、
そもそもどうやってプロになるの?
司法試験から転身してカメラに行こうとして、パリで入選したとかいっても芸術写真ではメシは食えない、やっぱ商業写真だわってことで、入門(アシスタント募集のところに応募)。すでに20代後半で出遅れ感があったので、もう選ばないで一番最初に雇ってくれたところでアシスタントとして稼働。全然選ばずに行ったわりには、結果的には良いところだったらしい。
もう完全に修行モードで、時給は最低時給でしかも雑務がしぬほどあるので実際にはその半分くらいであったとしても、そこは割り切って。
修行期間は2年。だいたい2年くらいあったら一本立ちするくらいの技術を習得できるかな、と。
オーストラリアでのフリーランス・カメラマンとしての稼働の実態
「どんな分野の仕事があるの?」と「どういう経路で仕事をゲットするの?」というのを聞いてみました。
仕事の分野としては、イベント写真。これはプライベートな結婚式やパーティなどの系統と、完全プロフェッショナルな系統(コンサート写真、パブやレストラン、企業イベント写真)。商品写真(レストランのメニュー撮影、あるいは他の商品の撮影)。その他ビジネスユース(企業HPやブログ、パンフレットに使う写真)
前田くんからいくつかサンプル写真をもらいました
商品撮影系
HPやブログ、企業広報系
イベント系
この分野と仕事ゲットルートが微妙に関連してて、完全口コミで仕事がくる場合もあるけど、最初は、AirTaskerで出してそこで仕事を得る(見せてもらったけど評判超良かった)、そこから口コミ。もうひとつはエージェンシーと契約してて、結構コミッションで抜かれるけど、それでもコンスタントに来るし、コンサートとか大きなイベントとか仕事の幅が広がるのが楽しいと。そこでまた口コミとか。
どのくらい忙しいかというと、「最近だと、企業ポートレートを一週間で70人くらい撮った週もあったかなー。 月火水シドニーオフィスで撮って、 そのまま夜に飛行機で飛んで(フライト代クライアントさん持ち) 翌日朝から木金ブリスベンオフィスで撮影 みたいな週も。 とにかく仕事の振り幅が大きくて飽きないです笑 なんか最近「仕事」と「プライベート」の境目があまりない感じがします。 全部ひっくるめて、自分の生活って感じです」
コンサートとかいいですよねー。高い金払ってアリーナ席座るよりもさらに先、場合によってはステージの上とか裏手からとか見れるんですから、好きなバンドとかだったら役得すぎる(仕事はしないといけないから、楽しんでる場合ではないんだろうけど)。
でも、ほんと、「こんなことでもないと」知らない、行けない、知り合えない局面や人が山盛りあって楽しいでしょー。
そういえばずっと前に僕もこちらで掃除のバイトやってるときは、いろんな個人宅や会社の中に入って、20年以上住んでるけど、こんな商売、こんな店があるなんておよそ想像もしてなかったとかあります(数百着以上の西欧コスプレ=マリー・アントワネットが着そうな西欧時代劇衣装とかをレンタルしてる倉庫とか壮観でしたよ)。仕事の醍醐味ですね。
さらに、いくら位の相場でやってるの?とズケズケ聞くと(笑)、だいたい時給で150-200の範囲で、一回2-3時間くらい。だけど、撮った後に、数百枚の作品から選び出して、レタッチかけてって作業が膨大にあるから、立て込んでくると死にそうだし、時給換算するとそう儲かるもんでもない。
今はもう安くしておきますよ的な営業は一切やってないけど、それでも相場からしたら安いとは思うと。
プロとアマの違い
彼曰くは、
「アマチュアの場合、 いくら時間がかかってもok。100枚に一枚良いものができればok 。自分の好きな写真を自分の好きなテイストで撮れればok 。自分の納得がゴール。
プロの場合、 限られた時間内に必ず結果を出さなければならない
100枚中99枚はヒットさせなければならない
自分の好みは一旦置いておいて、ひとまずクライアントさんの欲しいものを作れなければならない。クライアントさんの納得がゴール
だから、別にプロだからアマチュアより「良い写真」が撮れる、ってわけではないと思います。 アマチュアの奇跡の一枚がプロを超えることは全然あると思います。 ただ、プロが持っているものは、偶然に頼らないでいつでも結果が出せる確実性なのかなーと。 だからプロになって、別に自分の写真が「良く」なったとは思ってないです。「外さなく」なっただけ。 ただ、結果として頭に浮かんだ欲しい絵を欲しい時に描けるようになれたということは、写真を撮る身としてはよかったことかなー、と思います。(あとは付随的ながら、写真の活動資金を写真で賄える、っていうのもプロになった実際上のメリットかも。機材高いし笑)
その他雑談
ポルトガルチキンをもぐもぐ食べながらあれこれ関連する雑談をしてたのですが、覚えているのは(大体意見が一致するので、誰がどう発言したとか区別しないで書きます)、、
前回の増原さんの写真について
すごい感性が面白くていいですよね。なんでこの写真を撮りたいと思ったのかがわかる、あらゆる表現の原点である「感動」がちゃんとあって、それを伝えたいから写真を撮ったというのが最初から最近までブレずにあるのがすごい。
アマチュアの場合、うまくなると技術に走るというか、技術のための技術、いわゆる写真ぽい感じにしようと思って、まず現場で感動したという原点が抜け落ちてしまうケースが多いのだけど、増原さんはそういうのがないので、そこが凄い。
撮影現場でのポイントと技術
これは僕がもっぱら言ったのかな、「被写体とスポンサーが違う場合があるじゃない?孫のバースデーの写真をとるためにおじいちゃんがお金を出して写真を撮らせるような場合。被写体は孫だけど、スポンサーはおじいちゃん。
いろんな場合があると思うのだけど、同じイベントやパーティ写真とかでも、微妙にテーマが違うわけじゃん。孫のバースデーだったら、まず孫が幸せいっぱいであるのがテーマで、それをどう表現するか。そのあたりは芸術写真系のテクニックになるのかもしれないけど。
でもプロとしてやっていく場合、クライアントの意向、どういうテーマでどういう
イメージのものがほしいのかを的確に把握しないといけないから、そのあたりの打ち合わせやら作業中の会話のやりかたなどがプロの技になるのかもしれないし、教えられるとしたらそういうところもあるのかな」
ライティングと撮影
最近のチキンの写真が実に美味そうに撮れていて、
この表面上のテカり、脂の乗った美味しそうな感じがミソで、それってライティングで出すそうです。
下のハンバーガーのパンがやたら美味しそうに撮れてたんだけど、これもパンの左側にある光の反射がすごい効果的だよね、と聞いたら、まさにそうらしいです。
つまり、照明、ライティングをどうするかで写真はかなり決まってしまうと。そこをしっかりやるかどうか。
プロの流儀はいろいろあって、人によっては時間の90%くらい照明決めに充てる人もいるそうだけど、僕(前田くん)は、わりと早めに撮ってきますねー。あんまり待たせるとモデルさんが疲れてしまって、表情が変わってきてしまうので、そこは兼ね合い。
日本に比べてオーストラリアの方がやりやすくない?
それはある。僕(田村)が思うに、オーストラリアの方が全然田舎で、日本の地方都市くらいのスケールなんじゃないか。東京とかでは、エージェンシーとか仕事の縄張りとか、けっこうキチッと決まってそうで、自由にやりにくそうだけど、こっちはそこまでカチッとしてないから、関係者の顔が見える範囲でビジネスできるし、ダイレクトにつながるし。
あと、オーストラリア、てか西欧のほうが生活のうるおい、文化的、アート的なものに金かけますよね。こちらにきて花屋が多いなと思ったし、どのスーパーにもレジ周辺に花は売ってるし。写真も好きだし、昔ながらの西欧系の家だと壁に家族の写真がたくさん貼ってあるし(昔は肖像画だったんだろう)。
つまり、限られた可処分所得のなかから、そういう生活潤い系に支出する度合いが高いと。ゆえに写真も、金払ってでも撮ってもらうという機会やニーズが多いんじゃないかと。
しかしまあ、こんなこと偉そうに言ってる僕ら(僕と前田くん)でも、そこはまだ貧しい日本人だから(笑)、こと自分の部屋に花を買ってきて飾ろうとは思わないよねー、男の部屋なんか殺風景で何が悪いみたいな感じで、全然ひとのこと言えないよねーとかいって笑ってました。
最近ひげをはやしてる前田くん。
こうしてるとなかなかプロっぽいくてカッコいいぞ(てか、プロなんだけど)