D-DAYというのは、第二次大戦中、ナチスドイツにやられっぱなしだった連合軍が反転攻勢をかけるキッカケとなった史上最大規模(現在時点でもなお)のノルマンディー上陸作戦の日です。日本ではヨーロッパ戦線は遠い世界なのでピンとこなかったのですが、オーストラリアに来て頻繁に耳にしました。綿密に準備され、途方もない戦死者を出しながらも、歴史の転換点になった記念すべきイベント。転じて、全精力をもって何かを変える日、誰の人生にもD-DAYがあるよって意味で使ってます。植木さんの場合、ほんとそうだし。
植木さんはIT系エンジニア。オーストラリアWHのあとカナダWHで頑張って就活してたけど、帰国(体験談)。いつかオーストラリア(海外で)という野望のもと、さらにITキャリアを引き上げるためハイレベルの会社で頑張ってました。就職相談メールとかもしました。またモチベーションを維持するため、彼の「故郷」マンリーにやってきてマンリーオフの時は参加されたり、東京でのオフのときは航平くんとともに中心メンバーでもありました(津のオフのときも来られてたよね)。
懐かしのアルバム
マンリーオフの際、宇賀神夫妻とのスナップ
津のオフのとき(2017年)
直近の東京での植木さん壮行会(写真提供は航平くん)
ということで、「臥薪嘗胆」「捲土重来」という四字熟語さながらに、いよいよオーストラリア再上陸です。侵攻作戦は、こちらの大学院に進み、IT系でも一般のプログラミング系から、最高峰ともいえる高等数学を駆使するデーターサイエンスにランクアップすることであり、これまでのキャリアを生かしてこちらでフルタイムで採用されること(フルタイム採用で州ノミネート永住のリーチがかかる)。
既に学校は始まってるのですが、なかなか数学がきついと。「X3乗、Y4乗とかのグラフのここを微分して~とかやるんですけど~」という説明だけで、数学劣等生だった僕は意識不明の重体になりそうでした。
オーストラリアの就職
で、話は就活=永住獲得戦略になり、どうしたもんですかねーって。
いつもしている話なんですけど、どうもこっちの人材斡旋&人事部というのは(日本の基準から考えると)かなり無能で、正攻法でやってても、「学生?永住権持ってない?はいダメ~」みたいな形式審査が多い。日本はまだ潜在力を見るとか、履歴書の行間を読むとか洞察技術がよしとされるんだけど、こっちは馬鹿みたいなマークシート的な感じでやられるから成功率が低い。ただし、低いだけであってゼロではないから、もうこちらもスパムメールみたいな根性でやり続けるしかない。
だが、反面、コネ入社が推定半分くらいとも言われる。正確に調査した数字があるわけではないが、アネクドータル・エビデンス(=Anecdotal evidence =情況証拠=複数のエピソードをつなげ合わせるとぼんやり浮かんでくる物事の意味)としてはそうです。
あ、コネといっても日本のそれとは違います。日本のコネは「実力が無いにも関わらず、親が取引先とかいう人間(損得)関係で裏口入学的に便宜をはかってもらうこと」です。早い話が「不正行為」といってもいい。オーストラリアで僕が言っているコネは、人材会社~人事部というルートではなく、社長やマネージャーなど採用権限ある人が、直に一本釣りのように採用することです。そこでは社長が「良い」と思ったからこそ採用するのであって、日本のコネのようにダメなんだけど採用というのとは根本的に違います。日本でもこのパターンはあります。「社長がどっかから連れてきた人」って言い方になると思うけど。
このように採用権限のある人が、直にその人に会って、その人となりを見る機会があって、この人ならいいなって思ったから採用になっているので、ある意味では、単純スペック比較による人活人事経由よりも合理的で正解率が高いのだと思います。また有用だからこそ頻繁に用いられているのではないか。
それに分かる気がするのは、「仕事」のリアリティを考えてみれば、そんな常にスペック技術オンリーで人手不足になってるわけじゃないもん。てかそんなのマレでしょ?いくら専門技術があっても、人間的にクソだったら職場はめちゃくちゃだもん。あなたの職場だって、優秀かもしれないけど嘘ばっか言ってる奴は要らんでしょう?それは人間がやってる以上、こっちだって同じはず。だから、人手不足に悩む社長は口癖のように「誰か、いい人いない?」っていうわけで、「いい人」が欲しい。真面目で、嘘つかないで、そこそこ機転がきいて、学習能力も高かったら、スキルやキャリアが足りなくても実際やってけますもん(ぶっちゃけ、皆そんな大した仕事なんかしてないよ、正味の話)。
ほんとのほんとに突き詰めたリアルにいえば、スキルがわりと明確な現場系(フォークリフトが動かせるとか、溶接が上手いとか)ではなく、ホワイトカラーのデスク系だったら、スキルといってもかーなり曖昧だし、なによりも会社ごとにやり方がかーなり違うから単純に横滑りできるわけない。むしろ「前の会社ではこうだった」とかウザウザ言われるのが一番ムカつく。
ということで、イレギュラーなコネ系も大事。正規スパムメール方式と、非正規カジュアル方式を並行してやらなきゃって話です。
成功する麻雀~運の技術
植木さんは麻雀がお好きらしく(初耳。この人どんだけ趣味の引き出しあんの?)、麻雀のアナロジーでお話しておりました。
麻雀を始めゲームやギャンブルって、運と技術がめまぐるしく交錯します。技術がないと勝てないけど、技術だけでも勝てない。運が悪いときは負ける。そこでは「運のさばき方」は技術の大きな要素になる。
就活も同じでしょう。ベースとなるスキルとキャリアはあるけど、それだけでは勝てない。運が要る。運のさばき方がポイントになる。運が悪い時はどうしようもないけど、でも永遠に運が悪いわけではない。どっかで転換点がくる。それをいかにして察知するか。麻雀ではダメダメのときは、負けない麻雀、守りの麻雀に徹しつつ、潮の流れが変わってツイてきたら一気呵成に猛烈に攻める。そのメリハリがどれだけつけられるかが技術。
以下「運のさばき方」論を書いていたら、めちゃくちゃ長くなってしまったのでバッサリ削除しました。いつかエッセイにでも書こう。
就職でも、基本ダメダメであっても、なんかの拍子で幸運が2つも3つも重なることがある。
前にこちらで職探ししてて、店頭でレジュメすら貰ってもくれずシッシと追い返されて泣きそうになってた人がいましたが、丁度のその時、店のドアを開けて、ボスがランチから帰ってきました。「誰、この人?」みたいな話になり、ボスにじっーっと見つめられ、「この子、取ってやんな」って鶴の一声で採用になったという実話があります。
ちなみに、これも何度も書いてますが、「顔をじっと見て決める」というのは、不動産賃貸なんかでも僕も経験したし、よく聴きます。「人となりを見て」いるんだけど、多民族社会なだけに抽象的なスペックや先入観など役に立たず、人間性の底の底まで洞察するような「人を見る目」が大事だし、活用されているということでしょう。
また口に出してもいいますよね。You are a good customer, You’re a good manなど。日本語でいう「お得意様」「上客」という商業レベルではなく、「人間的に信頼できる」というニュアンスが入ってる気がする。お得意様だけだったら、Valued Customerって別の言い方をするしね。
さて、ここでもし、そのボスがランチから帰ってくるとき、赤信号にひっかかって1分遅れていたら、もうそれでこの話は成立しない。泣きながら横断歩道ですれ違っていただけでしょう。「運」ってそういうもんです。
前に渡したレジュメをマネージャーが処分し忘れて、たまたま机に引き出しにはいったままになっていて、たまたま誰かが急に辞めるって話になって急いで人を探すことなって、たまたま引き出しを開けたら、そのレジュメをみつけて、「あ、そういえばこんな人いたなー」とか思い出して、ちょっと電話してみようかって気になって電話したら、たまたま自分がその電話に出られて、、という何重にもかさなった偶然によって「運」は作られる。
そんなロイヤル・ストレート・フラッシュみたいな、国士無双みたいな偶然(幸運)、めったに無い。だけどゼロではない。淡々と積上げていくと、ある日、なんかが起きる場合もある。運ってそういうこと。
ここで植木さんと話してたのは、これらから引き出される法則性は進度が全く読めない、ということです。確率的に千回に一回だとして、それが何回目に来るかは神でもなければ絶対わからない。仮にそれが687回目に大当たりだったとしても686回目に「いよいよ次だ」とわかるわけでもない。ダウンロード進行みたいに今○%終了って表示がなされるわけでもない。一切が闇の中。つまり、成功の1秒前まで真っ暗闇にいるしかない。687回目に成功する瞬間まで、事実としては686連敗してるだけのことです。全く何の成果もない。だから全く無駄なことをやってるんじゃないか?という徒労感は半端ない。それにめげるかどうかですね。
ということで、死ぬほど考えに考えて戦略立てること、およそやれることは全部やるのは当然としても、実際の95%以上の時間は、ひたすら暗い海に向かって石を投げ続けるという、鳴きたくなるような、砂を噛むようなことをやりつづけるしかないです。あとはそのメンタル管理と気の持ち方でしょう。
特にカジュアル出会い系の場合、成功確率とか考えてると虚しくなるし、またその場の態度もガツガツして不自然になる。こういうのってナチュラルな人間同士のつきあいこそが尊いのですから、実際の場面(パーティとか)では、ただ罪もなくエンジョイしていればいいと思います。下心は出さない。てか忘れる。女の子と仲良くなるのと一緒ですね(笑)。
植木ちゃんランド建国
植木さんは多趣味の方で、体験談でもどこの紹介文でもいつも書いてますが(でも初見の人もいるから、延々繰り返すが)、ピアニストであり、マジシャンでもあり、カクテルを作ったり、大型車両の運転が趣味だったりします。今回は、4トン車両を運転するときの車幅感覚の研ぎ澄まされ方を語っていただきました。あと麻雀とか。多分もっともっとあるよね。
体験談の紹介文でも書いたけど、それだけ人生を楽しむリソースをもってたら、早く植木ワンダーランドを作ればいいよって言ってるし、本人もその気。もうITなんかほんとはやりたくなーい!って言ってます。こんなのは永住権とかメシゲットの手段でしかないと。
人生の本番はもっと他にある。その環境整備の一環としてオーストラリア永住権があるだけのこと。ムツゴロウの動物王国みたいな「植木ちゃんランド」を作るにせよ、社会保障や自由度、風光明媚なリソース、いろいろ考えるとオーストラリアの方がやりやすい。
だから本当の麻雀のあがりは、永住権ゲットではなく(あれは半荘くらいで)、トータルでは建国事業だと思います。いいよねー、都会からちょっと離れた静かな海辺の町とかに、安いカフェの出物を探して買って、店にピアノ置いて、夜はカクテルも作って、今月のオリジナルとか出して、月イチで手品やって、、、とか。まあ、あまりに趣味に流れて倒産するかもしれないけどさ(笑)、でも、それも一興、それも勲章ですよ。別にビジネスでなくても、別荘でも、定期パーティでも何でもいいし。
というわけで、あれこれ注文つけてポーズ取ってもらいました。
ピアニスト植木の図
手品師植木の図 (常に手品道具を持ち歩いているところが凄い)
はい、そこで、マジシャンのドヤ顔やって~ってリクエストに答えてくれた図
カクテルを作る植木さんの図、ゴルゴ13みたいな流し目が素敵です。
ということで建国チャレンジ、武運長久を祈る。