オーストラリアのリセッション入り
(オンラインサロンの「お金の部屋」に書いたものだけど、こちらにもお裾分けして上げておきます。)
もうとっくに入ってるんだけど、何を今更って感じなんだけど、それでも正面切って認めざるをえなくなってきてるという部分がNEWSなのかな。
それまでは大本営発表で、「悪いっぽく見えるし、実際そんな感じもしないでもないけど、でも大丈夫!」みたいな感じ。ちょうど日本における「日銀文学」みたいな=「悪い」と書けばいいのに、なんだかんだ意味不明な表現を駆使して認めない(「やや弱含み」「足踏み状態」「踊り場にさしかかった」とか)。
んでも、Uberやってても露骨にわかるけど、今年にはいって、しかも下半期になって悪くなってますよー。注文少ないし、稼げないもん。その結果、去年まであったプロモーションボーナスも全部なくなり、去年の今頃に比べて30%くらい稼ぎが減って、もう大変。
テクニカル的には「2四半期連続にマイナス成長」だったらリセッション(不況)になるんだから、ならば3か月前になってるはず。今回、September Quarter(9月四半期、9-10-11月の3ヶ月統計)の結果を受けて、3期連続マイナスになってるから(Per Capitaで算出すれば→後述)、もう誤魔化しきれなくなってる感じ。
いろんな新聞記事がありますので、読んだら大体分かります。そんな大したこと書いてないし。
https://www.news.com.au/finance/economy/australian-economy/grim-sign-for-economy-as-australia-enters-consumer-recession/news-story/3134e1b8ff43dd596428c73441093183
この最後の記事はグラフが豊富です。以下ところどころで引用しますね。
英文全部表示して機械翻訳でもつけようかと思ったけど、すごい分量になるので、それはやめて、僕が気がついたことのみ。
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↑グラフ的には、コロナ期の第一次ロックダウンのドカーンと下がって、どーんと上がるあたりが超派手で、次に第二次ロックダウンのどーんが小粒に派手で、最近のは全然地味な感じ。基準線にへばりついてるだけで、「ぼちぼちでんなー」的な感じなのだけど、よく見ると、確かにマイナスが3期も続くというのは珍しい。マイナスが続くというか、「回復がない」という。
3期連続マイナスというのは、1982-83年以来、実に40年ぶり。
なんでこうなってるの?と簡単に言ってしまえば、ビジネス環境が~とか、国際環境が~とかいう大きな話ではなく(遠因としてはあるのだろうが)、単純に、一般オージーのお家にお金がないから。皆がケチってお金を使わないから。だからダメダメなのよねー、という話です。
じゃ、なんでそんなに皆ケチケチしてるの?といえば、
(1)インフレ:とにかくなんでもかんでも上がっている。日本なんかの比じゃないくらい。それでも欧州やアメリカに比べればまだマシなんだけど。
(2)金利上昇:せっせとRBA(オーストラリアの日銀みたいな)が公定歩合を上げて、それがローン(モーゲージ)返済額を増やしている。オーストラリアの住宅ローンは、意外と変動金利が多いらしく、それもあって金利があがったら、もろに月々の支払いが増える。
よくあるケースで、60万ドル(6000万円)を変動金利ローンで借りてたら、ちょっと前(22年5月)に比べて、月々の支払額が1552ドルも増えるらしい。
これはキツイ。1500ドル新たにローンを組んで新車を買うとかいうならともかく、何の見返りもなく、ただ単に月15万円相当支出が増えたら、もともと裕福でない限り、てか背伸びして高い物件買ってギリギリでローン返済してるようなところは、かなり打撃になる。
だから、削れるものはとことん削る。朝のカフェでコーヒーを、、なんてのも、飲まなきゃ死ぬわけでもないし、削る。あれも削る、これも削る。レジャー費用とかホテル費用とか形の上では増えてるけど、インフレ率を考えるとむしろ下がっているといってもいい。
下のグラフは、オレンジ色の線が一人あたりの可処分所得(Disposable Income)で、青線が一人あたりのGDP。去年の後半あたりから、可処分所得(要するに「お小遣い」やね)が目立って落ち込んでいる。それに引っ張られるようにGDPも落ち込んできている。
The household saving-to-income ratio fell to 3.2 per cent in the June quarter – its lowest level since 2008.
稼ぎに対する貯蓄割合も3.2%まで下がり、これは2008年以来の低さ。
Household living standards are back to where they were in 2014
一般家庭の生活水準は2014年レベルまでに下がっている。
(3)税制
これまで低~中所得の控除( low-middle income tax offset (LMITO)が1500ドルあったのを廃止にした。これはモリソン政権のときに、当時の野党であるレイバーとでバイ・パーティザン(与野党合意)で決めたのを、今頃実施することになったのだが、時期が悪すぎて、所得税が単純に1500ドル増える(タックスリターンだから、払い戻しをあてにしてたら15万ほどアテが外れた)。
他に子育て系とかいろんな手当をしてるらしんだけど、そんなの吹き飛ばすくらい全体が悪い。てか、それもなかったらもっと悪い。
(4)Per Capita
全体のGDPではなく、パーキャピタ(一人あたり)のGDPで考えるのは、コロナ明けから大量に人が入ってきてるからです。50万人も入ってきている。人口比でいえば、日本に250-300万人新たに入ってきてるのと同じくらいのインパクト。だから単純に全体のGDPでは上がってるし、上がって当たり前です。しかし「50万人も増えた割には」というとダメダメだと。すなわち一人あたりのGDPが下がっている。なのでPer Capitaが重要視される。
オーストラリアの移民(学生ビザでもなんでも)は、要するに「客の輸入」だから、増えたらそれだけに経済効果がある。実際にもある。だから、オーストラリア経済はしょせん人口増加のネズミ講経済だと言われるわけだけど、そんな50万人も「客」を増やしているのにも関わらず、この惨状。もし、この50万人が入ってこなかったらどうなってたかというと、もうかなりヤバい。
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過去を紐解けば、90-91年の頃(バブル崩壊の頃)、オーストラリアも悲惨な状況にあり、今のローン金利が4.35%だったかなで、死ぐ~とか言ってるのに、当時の金利はなんと17.5%だった。失業率も11%もあった。
それを乗り切ったのが、当時財務大臣(後に首相)だったポール・キーティングで、そのときに文字通り身を切る改革をし、国際競争力をつけないと結局は駄目だからといって敢えて関税を下げて、同時に強制的な厚生年金加入制度(現在のスーパー)を作った。この荒療治だけど、根本治療が功を奏して、以後、オーストラリアは、リーマンショックをも乗り越え、先進国では唯一といっていいくらい不況知らずの国でした。
このあたりは僕がオーストラリアにやってくる直前だったので、よく覚えてます。
てか、日本がバブルの後始末ひとつロクにできず、逃げ腰になっていたのに対し、いくら血しぶきが飛びまくっても徹底的に膿を出そうというオーストラリアに将来性を感じたからです。でも、それから30年、オーストラリアも軟弱になってしまったよなー。
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独断私見でいえば、抜本治療は簡単で、金利を下げればいいだけでしょ。
もともとインフレを下げるために金利をあげるというのが間違ってるんだから。あれは景気が良くて、需要が供給を超えてるから物価があがる場合であり、コロナ物流問題とか他の理由で上がってるときは、金利あげても意味ないし、逆効果。
てか、むしろ金利をあげるから、すべてのコストが高くなり、結果的に物価が上がっているとすらいえる。
もともとが、アメリカの一連の自殺行為シリーズの一環で、アメリカの子分であるオーストラリアも従わざるをえないんだろうけど、そろそろ愛想をつかしてもいい頃なんで、いい加減金利下げてくれないかなと思いますね。
その割には不動産価格があがってるんだけど、これはチャイナマネーでしょう。他でも過去に書いたが、聞いた話にすぎないけど、Crows NestとChatswoodと二店舗のマネージャーをやってる人で、前者は景気悪くて売上下がってるけど、後者は景気がいいと。Chatswoodはチャイニーズが多いし、本土マネーが気前よく入ってきてるのではないかと。
アルバニーズ首相も、アメリカの腹話術人形みたいだったモリソンとは違って、多少はものがわかりそうで、先日も中国にいって関係改善してたようだし。まあ、日本と同じで、アメリカと関係を断てば(多少薄めるだけでも)、大体うまくいくように思うのですけどね。
もっともそれが出来るくらいなら苦労はいらないってことなんでしょうけど(現在の国の権力的地位にある者すべてがひっくり返ることになるから)、そのへんは、また(オンラインサロンの)時事スレに書きます。