最近の親子留学が無理ゲーになってる件

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今回の日本帰省時に、APLaCとは全然別系統のつてで渡豪相談をしました。親子留学の話でした。

昔は親子留学は盛んで、難しいなりにもまだ実現可能だったんだけど、今はもうかなり無理になってます。小さなお子さん一人つれて1年留学したら、600万とか700万円くらいかかります。これはかなり無理ゲーぽくないですか。

(1)OSHCの魔女算術
なんでこんなに高いの?といえば、一つは海外留学生保険(OSHC、Oversea Student Health Cover)。学生ビザを取る場合には強制的にどこかの保険会社の保険商品を買わねばならないもの。

諸物価高騰の折、年々あがっているのですけど、それでも一人留学の場合の費用は昔に比べてそれほど上がってません。いろいろな比較サイト(保険会社・商品別)によっても、1年一人で留学すると大体月50ドルを切るくらいです(年間600弱)。月4000円程度の保険料だったら日本の健康保険よりも安いとも言える(範囲が違うし、人によりけりなので一概に比較はできないが)。

ところが親子(親一人、子一人)になると、一気に7倍になり、年間3500ドル(月2.9万)に跳ね上がるのですよ。

数あるコンペア(比較)サイト、例えば
https://oshcaustralia.com.au/
で計算してみたものをキャプって並べた図をつけておきます。

一人留学(大人1のみ)年間5.5万
親子留学(大人1子1)年間35万
親子留学(大人1子5人)年間35万
家族留学(大人2子2)年間60万
カップル留学(大人2)年間35万

「魔女算術」という言葉がありますが(めちゃくちゃな計算方式の意味)、そんな感じで、なんで一人で留学したら年間5.5万程度なのが、子供が一人増えただけで年間35万に跳ね上がるのか?子供は病院にかかりやすいといっても7倍ってことはないだろう。
もしそうだとしたら、子供が5人になったら5倍になってもよさそうなのに同じ額(まあ安い分には文句は言わないが)。
また、夫婦・カップルで来る場合(大人二人)も親子留学と同じだから、子供が原因ではないっぽい。
要するに、一人だったら安いが、もうひとり増えるとガーンと跳ね上げる。なぜか?

これはいろんなサイトで見たけど、「理由はわからない」とされています。
ただ、カップルで来る場合、申請者本人はシングルで加入、同伴者は同伴者でシングルで加入するというやりかたがあるとか書かれていたけど、多くの保険会社はそういう加入の仕方を拒否ってるので、難しいとも書かれている。

昔は、ここまで異常ではなく、一人増えたら2倍、もう一人増えたら3倍というまともな感じだったし、それが多少重くなったとしても、ここまで無茶苦茶ではなかったです。

これはこれで問題なのだが、とりあえず現状ではそうなので、それを前提にするしかないです。
なので、昔に比べてOSHC保険がガーンと跳ね上がって予算を圧迫するのが一つ。

(2)チャイルドケア(託児所)の費用
オーストラリアの法律では、子供を家に一人にしておくのは違法なので、親が学校にいってる間は、子供はどこかに預けないといけないと言われている(言われているだけで、昔調べたら実は確たる法律はないという説もあるらしいけど)。

託児所を見つけるのが大変だとかいいますが、費用もすごい。
https://toddle.com.au/thecorkboard/child-care-costs
に解説と料金相場がある。レンジが広いので一概に言えないけど、1日100ドルあるいは160ドルかかるかもしれない。はっきり言って、親の学校代よりも子供の託児所代の方がかかる。

ただし、1日100ドル(実際には今は160くらいらしいが)だとしても、年間365日かかるわけではない。
学校の申込み方によるが、うまくやれば36週で50週くらい滞在出来るので、実際に託児所が必要なのは36週だけ。あとはホリデーだから一緒にいるから要らない。また週7日のうち土日は休みだからいらない。5日だけ(なかには4日だけ通学という学校もある)。なので、5*36で実質180日です。それでも1日1万だったら180万かかる。実際にはもっとかかる。

これでも4歳くらいならまだ楽な方で、これが小学校年齢以上になると、まず学区の関係で住まいを決め、そのうえで学区の学校に入学許可をもらい、さらにそれを教育省に出して証明書をもらい、それを移民局に出してようやくビザが出ます(最近やってないのでわからないけど、昔はそうだった)。

(3)一般物価のギャップ 学費と住居費
僕が来た90年代のオーストラリアは、給料も物価も日本の半分でなにもかも安かった。でも今は、給料も日本の2倍、物価も2倍。単純に30年前の4倍になってる。かつて2010年段階で本当なら日本も初任給60万円になっているべきと書いたが、一向に上がらず2020年段階でも同じままで、年々ギャップは広がっている。

結果、学校費用も昔に比べたら倍くらいになっている(週250ドルくらいが週450ドルくらいなってる)。家賃もまた数倍になっている(僕が94年に入ったフラットは2BRで220ドルだったが、今は800ドル以上する)

学費一年でざっと150万くらい。これは学校によって増減するし、また安い夜間コースを取って節約することもできるし、ビザ取り学校という手もあり、全部オンラインでやれば託児所代も浮く。が、夜間コースになるとまた託児所探しにツイストがかかる(夜間営業のところをさがす)し、ビザ取りでも最低限の英語力が必要なところ、そこまで達してる日本人は少ない。全部オンラインだったら、そもそも来る意味も無いし、ビザ取りで友達はできないし、楽しくもない。

家賃であるが、オーストラリアの不動産は死ぬほど高いのでレント(家賃)も高い。
よくあるホームステイだが、一人でいっても週340(18歳未満は360ドル)。
小さな子供連れはオプションにないのだが、無理言って探してもらってあったとしても、この値段には収まらず、もっと高くなる筈。仮に一人でも週340で1年52週いたら、それだけで340*52=17680ドルになる。年間170万円。月単価になおせば月の家賃が15万くらい。

他の選択肢は、ずっとホテル住まいだけど、これだって1泊1万円で年間365万。半額だとしても(そんな宿はほとんどないが、それでも)年間180万。

あとは、自分で借りるか、シェアハウスを探すかです。
シェアの場合、根性決めて探すならもしかしたら、子供好きだしいいよーって言ってくれる家があるかもしれないですけど、そこを探し当てるまでが大変。ただ、一般人どうしの個人契約だから、安いところもあるかもしれない。それでも週250-300はするかなー。

自分で家を借りるのもアリだけど、一般に半年縛りだし、これも高い。それに申し込んでも相手がOKというかわからんし、入ったところで家具からなにからまた買い揃えないといけない。ちなみに家具付きという物件もある。https://bit.ly/3bRHmta に家具付きで週350ドルまで検索したのがある。といっても、ありえないほど遠いのもあるし、家具と言ってもベッドだけとかいうのもある。参考まで。ただ、どうころんでも週250は必要だと思うし、それだけで1年130万はする。

(4)生活費
もうこの時点で、多くの人は予算破綻するかもしれない。。
なんせ、OSHCで35万、学費とビザ代で150万、託児所で180万、家賃で130万。これで500万くらいする。
これに生活費と交通費がかかる。1日3000円で全部済ませるとしても年間で100万はかかる。ここでトータル600万。もっとも、生活費は、他の費用に比べれば意外と安いし、やりくりの方法もあります。
ただ実際には、子供がいて1日30ドル程度で全てがおさまるとも思えず、2倍になっても不思議ではない。そうなれば700万。

以上を比べてみると託児所代が突出しているのがわかる。なので親子留学でも親二人で来る家族留学の場合であれば、片方が子供をみていれば、もう片方は学校にも働きにも出れるし、託児所代もかからないからやりやすい。
個人留学の場合は、託児所とか気にせずに、最低時給2000円以上の環境で日本の二倍稼ぐ事ができるから全体で帳尻は合わせやすい。しかし、託児所にあずけて働いたとしても、普通は託児所代の方が時給よりも高いから意味がない。

一方、1月1日までに住民票を海外転籍にすると翌年は税金がかからない、年金も保険料もかからない。日本はこの種の費用が異様に高いので、これらがなくなるだけでもかなり楽になる場合があり、トータルのプラマイを考えるべき。

まあ、いろいろな小技を使って多少安くすることは可能だけど、600万が200万になるようなことは無いでしょう。

対案:ラウンド・ロードトリップでもしたら?

なので、相談を受けてシュミレーションしたところ、そもそもなんで親子留学したいの?という話で、基本、非日常と開放感を味わいたいというあたりに本質があると思われ。
ならば、こんなことにお金を使うなら、オーストラリアに観光ビザでやってきて、レンタカー借りて、お子さんとラウンド(ロードトリップ)したほうがずっと有意義で思い出深いものになるよとアドバイスしてます。

観光ビザなら2000円で取れるし、OSHC要らないし、学費もいらない。
レンタカー代とホテル代と食費くらいで済む。お試しに数週間くらいやってみたらいい。てか1週間だけでも相当に濃厚な体験が出来るでしょう。観光ビザの一回の滞在期間は3ヶ月で、一回外に出て(NZ旅行とか日本に帰るとか)また入ってきたら3ヶ月居れる。
何回もやっていったら徐々にうまくなる。ラウンドと同じで慣れによる上達がある。最初は高いホテルに泊まってるけど、だんだんコツもわかるし、田舎の安いモーテルでカウンターで交渉すると安くなるとか、Airbnbとか、場合によっては短期シェアとか、タフになればキャラバンパークでキャンプ張ってということも出来る。親子でWWOOFというのも受け入れてくれるところがあれば成り立ちうる。交渉次第。つまり、向上する余地があるし、なによりも全て実社会なので教室よりも現地のことがよくわかる。やればやるほど面白くはなるはず。

場合によっては短期で託児所に預けたり、マクドやショッピングセンターにはだいたいある巨大な子供の遊び場もある。英語をやりたいなら、無料の教会のレッスンなんかもどこにでもある(本気で上達したいなら勧めないが、しかし気分は味わえるし、街の人とも出会える)。

レンタカーも慣れてきたら、乗り捨てクルマを移動するためのものとして、1日1ドルレンタを賢く見つけてくるという手もある。バッパーの人たちとのリフト(相乗り)もある。

全く海外慣れしてない人だったらちょい無理だと思うが、親が過去に1年留学とかワーホリ経験をしていたら、このくらい出来ると思うし、予算に応じて伸縮しやすいし、伸びしろがあるのでオススメだと思う。留学の場合は、最初のセッティングが異様に大変(家を借りるのも最低半年だったりするし、家と学校の位置に縛られながら託児所を選びという針の穴を通すようなセッティングが大変)。でも、気まぐれトリップだったら、初動が楽だし、随時フレキシブルに変化させていけるからやりやすい。

一点、問題があるとしたら、エージェントである僕にはビタ一文入らないことくらいである(笑)。

 

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