エッセイを本にしてみました
シドニー雑記帳と今週の一枚エッセイ、合わせて1100本余のなかから選択して、「シドニー雑記帳」として本にしてみました。既にAmazon JPで売られています。(クリックすると売り場にいけます)
自慢ではないが(ほんとに)まだ一冊も売れてません(笑)。まあ、市場に出てまだ数日なのですけど。
好奇心と見る前に飛べ
今回出版した理由は、第一に「物珍しさ」「好奇心」です。
Kindle Direct Publishingというサービスがあるのを耳にしました。なんと無料で出版できるとか?これまで自費出版でも150万くらいは自腹を切らないといけなかったのですが、それが無料というのは、どえりゃ~画期的です。
Amazonのサイトにかかれている説明や、ネットでいろいろ解説されているものを読んだりしているうちに、10分も経たない間にウンザリしてきた。よく分からないところも多いし。こんなの調べてるヒマがあったら自分で実際にやってみた方が早いわと思った。それは30年前、海外生活を調べているくらいならやった方が早いわで来たときと同じ、まだネットが珍しかった時代に独学HTMLでHPを作った頃も、その他もろもろの場合も、調べてるくらいだったら実際にやった方が早いし、自分でやらなきゃ本当のところは分からない、だったらやるべ、見る前に跳べ。
やってみたら意外と簡単に出来ちゃうもんです。本当にこれでいいのか、なにか致命的に間違ってるんじゃないかって気もしないでもないけど、それはまあ走りながら考えればいいでしょう。
簡単というのは、本文の形式で、普通のWORD文書でいけるという点。今回も300kb程度のwordファイルをアップロードして終わりです。ページ設定とかフォントとかいろいろありそうで、デジタル出版だから、読み手が自由に変えられますから、こっちが苦労して設定してもあんまり意味ないのですね。逆に言えばテキストそれ自体に集中すればよく、見てくれとかそんなに気になくてもいい(しても意味が乏しい)。え、こんなんでいいの?って感じ。
紙媒体での出版は、日本にいる頃仕事関係でチラ見したことがありますが、それはもう職人の世界で、活字が◯号とかピッチをどうしてとか凄いのですが、デジタルはネタだけって感じです。
それよりも本当に難しいのは、WORDの使いこなしではないかと思われます。96年の頃に「シドニー生活マニュアル」という小冊子をWORDで作ったんですけど(その内容をUPするためのホームページだったというのが原点)、まあ苦労しました。イメージ通りにレイアウトがはまらないわ、なんかWORD独特の規則があって、それはついに未だに理解できてないです。だから図表とか画像とか扱うコンテンツだったら、そこで苦労しそうです。なんでこんな使い勝手の悪いソフトが定番として君臨しているのか不思議です。WEBのHTML処理の方がずっと合理的で簡単ですもん。
書籍とネット
書籍化の話は、ずっとずっと前に(90年代)、「生活マニュアル」を出版化しないという話もらったことがあります。その際は、同じコンテンツはサイトから削除してくださいって話だったんで、丁重にお断りしました。一つは、ネットと書籍の役割分担があり、同時存在しても構わんだろというのが僕の感覚。今回も出版したから元ネタのエッセイは全部削除してしまうというやり方もあったんですけど、それはしません。なんか違うと思うから。
もう一つは、これも日本時代の経験ですけど、本って信じられないくらい売れないもんだということを知ってたからです。日販東販の流通ルートに載せるだけでも大変。載せたところで賞味期間が非常に短い。あっという間に返本されて、それでもう半永久的に日の目を見ない。いかに本屋に平積みにして置いてもらうかという営業にかかっていうというリアルな実態。そして本屋自体が劇的に減少しているという趨勢。それらに比べればネットの場合は、置いておけば永久に人目に触れる状態を維持できるし、検索にもひっかかってくるわけで、その意味でもネットから削除なんかありえないです。
しかし、デジタル出版、特にこのKDP (kindle direct publishing)は、出版というよりもネットでブログをやる感覚に近いです。とにかくコンテンツを並べておくだけですから。
それに気に入ったのは、内容も、値段も随時変更可能だという点です。あとになって、ミスや変な箇所、どうしても直したいところに気づいても後の祭りだということがない。その都度アップロードし直せばいい(反映されるまで2-3日かかるのがもどかしいけど)。値段も変えられるし、kindle unlimitedに入れると無料で読めるようにできるとか、他にもマーケ手段とかあるとか(そのあたりの細かなことはやってないので、これからの課題です)。また、購入した人も、読む都度ダウンロードするわけだから、常に新しい版を読めるわけで、その意味でもネットに近いです。
これ実践的には大きなところで、一回固定されたら変更不可能となると、いよいよ出す段階で死ぬほどチェックしなきゃならないことになります。しかし、これがイヤなんですよねー。もう同じ文章を何度も何度も自分で読んでると、何がいいのかわからなくなってくるし、次から次へと新しいアイディアが出てきてエンドレスになる。一番怖いのは、きれいにまとめようとすると、「勢い」がなくなって面白くなくなることです。バンドと同じで、多少音を間違えようがミスしようが、どーんとやっちゃった方がいい。チマチマ細かいところをきれいにしていると、なにかが死んでしまう。その点、「いつでも直せる」というのは大きな福音だし、大きな「言い訳」「背中押し」にもなります。あとで直せばいっかと思えるし。これ大きいですよ。
戦略的には
目論見としては、一つには新しいチャネルがほしいなと。ネットで検索して出会うというのはこれまでやってきましたし、それによってAPLaCが25年以上やってこれたわけだし、あなたにも、あなたにも出会えたわけです。それは一つのチャネル。いやあやって良かったですよ、出会えましたから。やっぱ世の中、自分から手を上げないと何も始まらない。
んでも、気になる点もある。一つは日本の相対的貧困化で、これは10年以上前から予見はしてましたが、留学とかワーホリ年齢の日本人の所得が相対的に(オーストラリアや海外の物価に比べて)貧困化していること。僕が来た頃は、オーストラリアの物価なんか日本の半値以下だし、Glebeの2DKのフラットが週220ドルで借りられたんだけど、今は800ドルくらいします。語学学校も、え、そんなもんでいいの?ってくらい安く感じた。ボーナスの半分以下で半年分の授業料だった。今は授業料も生活費も上がるわ、だけど日本の賃金(特に若年層)は伸びてないです。むしろ減ってる。だからだんだんギャップがキツイもんになってます。だからこのテーマ(海外)でやってても先細りする感はある。高嶺の花になっていっちゃうってことです。
もう一つはGoogle検索の劣化で、これはオンラインサロンで書いたのですが、ハッカーとか先端的な連中ほどそういう。僕もかなり前からおかしいなって感じてます(その旨エッセイに書いたことも一再ならずあります)。サロンで書いた紹介記事はここですので興味のある向きは。簡単に言えば、先端的な連中の間で、Google検索のときに”site:reddit.com “を付記して、Redditという世界の掲示板でやると埋もれていた検索結果が出てくるとか。SEOもアルゴリズムが複雑になりすぎて事実上無理になってるし、行き過ぎた商業主義の結果、勝手にAIが検索クエリを変更して違うものを検索させられてたり、結果の一面の上位はAD(広告)で埋め尽くされたり、SEOに金払うならGoogle広告に金払った方がマシだという状況などなど。
なので普通のネット検索以外にもチャネルがほしいな、ネットや海外という切り口ではなく、本好きとか、活字中毒とかそっち系の切り口がほしいな、なるかどうかわからんけど、とりあえずやってみ、ということです。
なんでそこまでするの?といえば、ビジネス的思惑もあるんだけど、それ以上に「出会い」があるでしょう?これまで千人以上と出会って、オフも数限りなくやって、あれってチャネルがあってこそですからね。ゼニカネよりも、人生の彩りです。
とはいうものの、胸算用的には、とりあえず作って並べておけば、あとは不労所得ですからね。まあ、そんなに売れないにしても、何冊も何十冊も並べておけば、誰かが間違って買うかもしれませんし(笑)。並べておく費用は基本無料だし、それでどれだけ入るかはわからないけど、だんだん売り方のコツがわかったり、売れる本の書き方がわかってきたら、足腰立たなくなった老後にもやれるかもだし、年金よりもアテになるかもってのもあります。でも、こんなの狙ってから結実するまで数年から十数年かかります。APLaCだって、最初の数年は閑古鳥でしたしね。だからなおのこと、趣味とか、好奇心とか、面白さ一発で初期の頃は突っ走ったほうがいいと思ってます。小賢しいことやってても賞味期限は短いんで。
あ、これは本文にも書いたけど、「ここでないどこかの日々」では、なんかしらん普遍的なことを考えてしまう傾向があるようです。だから25年前に書いた文章を今読んでも違和感がなく読めます。比喩とか、語り起こしのマクラ部分とかで当時の背景事情が絡んでる部分を消したりするだけで、内容そのものは通用する。今から20年前の文章でも面白く読めるなら、今から20年後でも面白く読めるだろうと思うし。
セレクトの妙味
過去1100本から10本余りを選ぶという作業は、しんどいようで、楽しかったです。てか、そんなにシリアスに選んでないし(笑)。
これ一冊に限ると言われたら、セレクションに死ぬほど悩むだろうけど、要領がわかれば、過去のHPと同じでどんどん次から次と出せますし、いずれは全部を何らかの形で整理したいという欲求もあります。ある程度まとまったシリーズ(世界史シリーズとか、日本帰省シリーズとか)を集めるとか、似たようなテーマのやつを合体して、また再構成してみるとか。足りないところや、新規に思いつたことを付記していくとか。だいたい千本も書けば、なにを書いても繰り返しになってきてるわけで、ニッチ狙いのように「まだ書いてないこと」をさがすくらいなら王道テーマを整理したり深めたりしたほうがいいということもあります。だから単に右から左に書籍化するというよりも、再編集みたいな感じです。
とはいいながら、数が膨大なので、とりあえずご挨拶くらいです。一冊目なので、「なんで移住したの?」的な部分にフォーカスを入れてまとめてますけど、でも、読み味が同じだと飽きるので散らしてます。キリスト教の一回目を入れたり。
これがなんか、はるか昔の学生時代に手持ち曲から気に入ったのをカセットやCDに編集する作業に似てて楽しいです。セレクションの楽しみ。あるいは、今日のパーティのために、地下のワインセラーに降りていって、これとこれを出そうかなと選ぶ作業とか、お弁当を作ってあげるときのおかず選びとか、そんな感じ。
他人が書いた文章を編集するなら、気をつかうし大変だろうけど、自分の文章ですからね、遠慮はいらないから楽です。「あ、ここ、ダメね」とかバサバサ切れるし、新たにその部分だけ違った形で書き直したり、本人が書くから違和感ないし。
カバーデザイン
カバーデザインは、本文の最後にも書いてますが、かつてワーホリとしてオーストラリアに来られAPLaCの卒業生でもある佐藤さんにお願いしました。シドニーにおられる際、お仕事(デザイン)を拝見する機会があり、そのセンスがいいなと記憶してたからです。そして2回前くらいの世界オンラインオフで久しぶりにお会いし、勤務先を辞めて、デザイン事務所として独立するということをお聞きし、お願いしました。クライアント第一号が僕であるという光栄な。ワーホリに来られたのが一〇年くらい前だったので、いろいろな偶然が積み重なってこうなったというのは、不思議なようでいて、人生こんなものなのでしょう。
現在は「ウェブデザイン・キクラゲ」という会社だそうで、なぜキクラゲなの?と聴くと、「ウェブであなたの事業を引き立てる、 いつもの脇役でありたい」をコンセプトから、キクラゲ(木耳)のように、”主役ではないけど料理を引き立てる食感と栄養を提供する、いつもの身近な存在”でありたいとの思いが込められているそうです。そういえば、以前、佐藤さんのワーホリの際に、「絵画(アート)は「問題提起」でデザインは「解決」」って言葉を聞いて、なるほどーと納得したのを思い出しました。
今回のカバーでも、僕の思いつきに振り回されて、佐藤さんには何度も何度も何度もやっていただきました。すいません。感謝あるのみです。
デザイン作業は楽しく(って、僕はあれこれ注文をつけてればいいだけで、佐藤さんは大変だったろうけど)、最後の方は、自分でも要領がわかってきて、自分で色調整とかやってみて考えてました。いちいち手を煩わせるのもナンだし、口で説明しにくしい、実験的にやってみて自分で納得したいだけだし。
例えば、最終版の真ん中のサブタイの背景色でも、もっと他にないかで、
などと色を変えて、うーん、ちょっと違うな、、とかやってました。
今回のカバーは、たまたま佐藤さんが持っておられたCremorneの写真ですが、青い海と空、オレンジ色の屋根が、いかにもオーストラリア、シドニー!(知ってる人は知っている的な)なので、これを。写真以外のデザインも相当考えて頂いたんだけど、写真が一番インパクトあるし、その後、二作目三作目と続くことを考えると、写真だけ差し替えれば良いほうが楽だなと。
他にも膨大な数の案があって紹介したいところですが、そこは佐藤さんの知的生産物なので、公開はしません。なんか仁義にもとるような気がする。
無料で読めます
Kindle Unlimitedに登録してるので、無料で読めます。
偶然なんですけど、無料試し読みが結構量が多いので(僕が決めたんじゃなくて、Amazonが勝手に決めてる、これも自分でやらないと分からんよな)、そこに新規書き下ろし分の一つ「ここではないどこかの日々」が読めます。
値段は、最初はこのくらいの厚さならこのくらいかなと780円とか980円とか考えたんだけど、ま、でも、お弁当一個分くらいかなってことで、ワンコイン500円にしました。でも、これあとで変えるかもしれないです。いくらにしたらいいのか自分でもわかってないし。
ま、あんまり深く考えずに、むしろ深く考えないことをテーマにするくらいの感じでやってみました報告です。
んでも、一冊も売れないのが延々続くのも辛いので、よろしくです。てか、レビュー書いてほしいな。Amazonの書籍売り場が、APLaCの掲示板みたいになって、まるで乗っ取ってしまうくらいになったら面白いな、とか。いや、単に面白がってるだけですけど。