伊藤洳さん、野沢育世さんワーホリ終了・帰国

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帰国ラッシュだったんで、まとめて。

伊藤さんの場合

まず伊藤洳(うるお)さんですけど、やあ、いいワーホリをされたと思います。
何がどう良かったの?とかいい出したら本が書けるくらい長くなりそうだし、あとは本人の体験談を待ちましょう。

30万かそこらくらい予算でやってきたけど、結果としていえば、シドニー時代の超絶自転車操業(バイトで稼ぐそばから一週間づつ学校を延長)にはじまり、最後NTの島でアボリジニの人々に囲まれて暮らすラウンドまで、予算数百万にも引けを取らない、てか勝っているくらいの満漢全席フルワーホリだったと思います。むしろお金がないことを逆手に取って、高密度にしあげていったという感じ。

上↑ カメラマンの前田くんが特別に撮影した伊藤さんのフォトセッションから。これ、カッコいいよね

下↓ラウンドの最後、NTの離れ小島のショップで働く。マネージャーご夫妻と。お客はアボリジニ系の人が大半。最初ジャパレス探しできゃーとか言ってたのが、南海の離れ小島まで一人でやってきて職ゲットできるまでに。

で、僕から見てて思ったのは、「ああ、なるほど、正社員になるメリットはこれか」という点です。
伊藤さん、基本聡明だし、なんでもやれば出来るんだけど、これまで劇団やってたんで、仕事面でいえばカジュアルメイン。その経験が、仕事のみならず、生活や人生設計にも影響してるなーって部分です。

伊藤さんに関しては、ほんと、あれこれ細かいところまでかなりアドバイスしたと思います。段階に応じて「いや、そこはそう考えずに、こうやってしまうといいよー」って考え方ややり方です。伊藤さん、すぐに、「なるほど!」と飲み込むし、わかればすぐに実現できちゃうくらい出来る人なんだけど、なんで最初にそう思わないのかな?と。

カジュアルやってるとどうしても思考単位が小さく、簡単になる気がします。「正社員」と一括に出来ないのは百も承知でいいますと、一般の業務においてはもっともっと遥かに複雑ですし、タスクも「不可能を強いられる」レベルに高いし、それに比例して責任も精神的圧迫も強い。だって、過労死したり自殺する人だっているくらいですから。

僕自身、こっちで本業補助でバイトいろいろやってますけど、例えば今のUberEatsにせよ前のColesにせよ、日本でやってた仕事(弁護士業)に比べたら、大体10%くらいの複雑さです。それなりにいろいろ現場のワザとか知識はいるのだけど、それでも、めちゃくちゃシンプルです。もう「働いてる」って気がしないくらい。

弁護士業が特殊だとは別に思わないし、普通のビジネスマンでも第一線でバリバリやってる連中だったら似たりよったりだと思います。弁護士(イソ弁ですら)だったら、30-50件くらい事件やらされますので(事務所によるが、僕はそう)、同時並行で30-50のプロジェクトを動かさないといけない。登場人物を覚えるだけでも数百人だし、それぞれに進行速度も、重要ポイントの置き方も全部違うし、それを24時間に分割して日々のスケジューリングをします。一つ片付けたら次に~とかやってらんない。50なら50全部同時並行でやらないと廻らない。
当然思考は複雑になりますし、それを可能にするいろいろなワザも覚えますし、また必要に応じて新規に自分でワザを作らないといけない。それがいい訓練になるんですよね。

伊藤さんみてて思ったのは、ああ、そういう訓練機会をミスってきたんだなーって。だから、あれこれアドバイスも差し上げました。例えば、バイトについてもいかに見つけるかよりも、いかに現状にしがみつかないかの方が大事だよ(アップグレードするために)とか、最初に学校行く本当の意味はなにかとか、バイトしてお金を貯めて学校に再入学するのは時間のムダで、稼ぐそばから一週単位で延長すれば時間が半分で済む(「貯める」というプロセスが無駄)とかいう同時並行のやりかた。そして、一つの行動を複数の観点から意味づけして、Aという点ではダメだったけど、Bという観点ではすごい得られたとか、複眼的に評価しつつ前に進むとか。

どんな生き方をしてもそれはやらないといけないし、学ぶ機会はあるんだけど、日本の(かなりハードな)正社員的なポジションだと、それを強制的にやらされるので、否が応でも身につきます(ただし、一定覚えてしまったとは簡単になるので、今度はしがみつき安定志向が人生を拘束するんで、そこは良し悪しなんだけど)。

今回も日本帰ってからどうすんの?的な話から、あ、そこはね、とか色々言ってました。これも書き出したら長くなるので割愛。

なんか、そういうコース(世間の渡り方・大人講座みたいな)作ったらニーズあるかもね。仕事の手の抜き方とか、正しい嘘のつき方とか、いかに健康に忘却するかとか、不倫状況になったときのノウハウとか(笑)、喧嘩のやり方&収め方とか、振り下ろせない拳は振り上げないとか。

伊藤さん、伸びしろまだまだあるので、どんどん相談してください~

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野沢育世さんの場合

野沢さんは、18年の10月にワーホリで来られて、ワーホリ終了後なんか物足りないので英語学校で半年だけ延長しておられました。お会いするのはお久しぶりでした。
なんか来たときよりも落ち着いちゃって大人になった感じだけど、まあ、まだ20代前半でお若いので、実際にも大人になってるのでしょう。

野沢さんの場合、ラウンドでバーンと大冒険とかいうのはなく、ジャパレスで働いて、シティに住んで(でも人口4人というタコ部屋ではない快適な)って感じですけど、それでも十分に満足されたようです。

「満足された感じ」って、言葉ではいいにくいんですけど、会うとオーラ的にわかりますよ。なんかオカルティックみたいなこと言ってるようだけど、そうじゃなくて。例えば、温泉旅行とかいくでしょ?温泉に浸かってエンジョイして、ちょっとフラフラになるくらいの感じで、頬を上気させて部屋に戻ってくる人とか見たら、ああ「満足したんだな」ってオーラ的にわかるでしょ?「いやあ、いい湯だったー」とか口で説明されて初めて分かるって感じじゃなくて、もう見たら分かるという。
そんな感じです。

野沢さん、最初に日本オフの羽田でお会いして、CA志望だったんですよね。
今回のコロナ騒ぎで、世界の航空業界大打撃で、オーストラリアでもヴァージョンがぶっ潰れそうですけど、だからといって未来永劫海外旅行がなくなるわけないです。てか、こんなの一過性の問題だから、遅かれ早かれ解除になっていって、そうなると堰き止めた水があふれるようになるから、また揺れ戻しですごい需要になると思ってます。

そこはもう僕は確信してます。なんでそんなに確信できるの?といえば、「人は一回覚えた快楽は絶対に忘れない」からです。それが人間の習性で、それがあるから、万引も放火もドラッグも何もやるんですよ。もう懲りた絶対やめようと思っていても、一度覚えた快楽は、そうそう断ち切ることは出来ない。
人生破壊する犯罪ですらそうなんだから、別に悪いことでもなんでもない海外旅行とか経験とかが忘れられるわけないだろ?です。

そういう野沢さんに紹介しようか?とおすすめした過去の卒業生が二人います。
お忘れからもしれないから、ここに書いておきます。

一人は、今もフィンエアでCAやってる沙耶ちゃんです。ちょうど1年前くらいに来られて記事にしてます。彼女も野沢さんと同じくらいの20歳くらいでこっち来て、なんだかんだやって、ただ単に「安く海外旅行にいける」というその一点だけでCAになって、行きまくってるらしいです。本当はエミレーツに行きたくて今もトライしてるらしいけど(一番世界の隅々まで路線があるので旅できるから)。
沙耶ちゃんSaysですけど、日本のJALとかANAはもう最初から対象にしてなかったそうです。日本的な企業体質が合わんと。まあ、旅したいだけでCAって人には確かに向いてないかも。ということで、実際にCAやってる人にあれこれ聞いたほうがいいです。去年の時点でまだ26歳かそこらだったから、数年先の先輩としていい水先案内になってくれると思います。

もうひとりはAiriさんで、この人の体験談も記事も多いんだけど、最近のは「Airiさんカナダ上陸」で、2009年Ausワーホリを皮切りに→2年間日本(地元沖縄)→NZワーホリ→Aus2回目WH→1.5年日本(東京)→アイルランドWH→カナダ上陸(2018年2月時点)でした。
彼女も最初来たときは二十歳そこそこだったと思うので、同年代くらいです。

APLaCも長いことやってるんで、そういう人材バンク的機能はあると思います。なんかあったら聞いてください。

しかし、いいよね、海外デビュー年齢が早いと、いろんな展開があって楽しみです。僕なんか最初にきたのが34歳ですからねー。

日本にいるときは日本で学べることを学び、海外では海外でまた学ぶんだけど、どっちが人間力を築くのに良いか?といえば、それこそ一概に言えないです。僕の感じだと、日本では、先程伊藤さんのところで書いたように、「複雑なものを複雑なまま処理する」技術は学べますよね。もう人間関係とか非常に気を使いますけど、単に受け身に気を使ってるだけではなく、積極的にこちらから「仕掛けていく」くらいでないと日本では自分の思うように生きていけないので。

海外は、逆にシンプルに削ぎ落とすのに向いてるかもしれないなー。「今日は空が青くてすごく綺麗だから、まあそれで人生OKってことにしようか」みたいな、もの凄い「削ぎ落とし」が出来ます。なにもかもが不安定な環境(ビザも仕事も住まいも収入も人間関係もすべてがテンポラリー)でやっていくから、肝っ玉や臨機応変力は凄くつく(ビジネスでも応用可能)のと同時に、そういうフイルターで最後まで残るのは「自分」だけなんです。たった一つ、最初から最後まで存在してるのは自分だけ。だから、自分に関するあらゆる属性(こういう会社にいるから俺はこういう人間だとか)が削ぎ落とされて、削ぎ落とされて、精米歩合50%の大吟醸みたいな、自分の大吟醸が残るんですな。それがいいですね。

ただどちらもデメリットがあって、日本でいると複雑すぎてそれでヤラれてしまって何にもできない感に囚われてしまう危険があり、海外は自由すぎてしたたかな戦略性や生産性みたいなのが乏しくなるリスクもあります。つまりラテン化しすぎという。ま、でも、平均的な日本人だったら、そこまで野放図にラテン化できないですけどね。

ということで野沢さんの人生的には、まだ食前酒を飲んだくらいって感じですかね。
これからが楽しみです。

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