2024年帰省記(10) 松山行(04) 興居島フェリー小遠足

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松山行(03)より承前

遠足のお弁当(パン)もゲットしたし、いよいよ興居島フェリーの小旅行、、というより遠足みたいな感じだけど。

松山市駅の、また違ったホームから出発です。

ここで「なぜ興居島?」を説明すると、「なんとなく」でしかないです。
興居島って、最初「ごごしま」と読めなくて、そう読むのだと知ってからも覚えられなくて、勝手に「GOGO!島、イケイケ島」と読み替えてたくらいです。

松屋市の地図を見てて、「のんびり鄙びた風景がみたいなー」「瀬戸内の海を感じたいな」と思ってると、手頃な距離に興居島と、島に渡る短い距離のフェリーがあったので、これだと思ったのですね。
しかも興居島に向かう線路が最後の方で海沿いを走るので、のんびーりした電車の車窓から海が見えたらいいよねーと。
松山城までいったら、観光的に道後温泉本館でしょうとか、坂の上の雲ミュージアムでしょうとか、子規庵でしょうとかあるんだけど、そーんなに興味はなかったのですよ。40年前くらいから「坂の上の雲」は好きで何度も読んでますし、松山のイメージもあの小説によるところが多いです。しかし聖地巡礼するほどでもないし、作品とリアルの今は別だから聖地巡礼する趣味それ自体がないです。

それにいかにも観光用にしつらえたモノよりも、もっと「地元のダシ」が染みている普通の風景が見たかったですね。瀬戸内の鄙びた感じ、だけど寂れてなくて、明るい陽光、乾いた日なたのイメージがあるけど、本当にそうなのか知りたいという。

興居島の沖合には大きな島々が沢山ありますし、島内の宿泊施設もあったりしますけど、遠い分だけ時間がかかるし、雰囲気を味わえればそれで良かった、いわば指先ですくってペロッと舐める程度で良かったので、興居島のイージーな近さは魅力的でした。

結果論的にはその目論見はほぼ百パー達せられて、個人的には大満足です。

だっていきなり目的が達せられたのですよ

がらーんとした昼間の電車に、のんびりした海の風景。そうそうこんな感じって。  もう徹底的にがらーん。

駅についてものんびり~。

似たような写真が続いて悪いですけど、この風景が何分か続くのですが、よかったですねー。
自分の心臓の鼓動のスピードと時の流れる速度がシンクロするような心地よさがあります。

でもって、ほどなくして終着駅の高浜駅。

駅を出ても何もない。まっすぐ遠くに見えるのがフェリーの乗り場らしい。

やはり食べ物屋も喫茶店もなにもない。

ここでフェリーの時間を調べていると、無料駐車場の事務所のおじさんがパンフレットや時刻表を渡し、親切にいろいろ説明してくれました。
曰く、フェリーは興居島の泊港にいくルートと、由良港にいくルートがあること、事前に切符は買えなくて乗ってから買うこと、島内は交通機関がなにもないので貸自転車があるけど、その料金もフェリー内で払うこと、フェリーの時間まですぐそこにある待合所で待つこと。

まだ出発まで多少時間があったし、暑いこともあって、おすすめどおり待合所に入って、さっき買ったパンを二人でぱくついてました。食べ終わって、説明してくれたおじさんの事務所の裏手の喫煙所でフェリーを待ってると、またおじさんが出てきて、追加公演をしてくれました。でも面白かったですね。

ほら由良港からフェリーがきた。あれに乗りなさい。よくフェリーの周囲にスナメリ(イルカの仲間)がまとわりついて遊んでるよ(残念ながら今回は見れなかった)。

あれが、「ぼっちゃん」に出てくるターナー島だよ、だけどぼっちゃん時代から中央の岩部分が崩落してるから、もし漱石がこれを見てたとするなら、今見えてるのとは違った形のものを見ていたことになるよ、とか。写真は島からの帰路に撮ったターナー島。

フェリーが接岸して、まずは下船が先 僕ら以外全員地元人のようです。

ひとしきり下船が終了したら乗船。一切のアナウンスはなく、指示もなく、各自の判断でやってるんだけど、「見りゃ常識的にわかるだろ」って感じがいいですね。過保護指示にはうんざりなんで。

ここで記念に森くんの写真。

地元民の森くん、松山市民にとって、興居島ってどんな存在なの?というと、海水浴場があるくらいですねー、学生時代に彼女と一回泳ぎにきて、それくらいです、と。

港の護岸の石垣があるあたりの風景がいいです。なんか日本映画に出てきそうな。島の高校生がチャリンコ停めて、あのあたりに座って、「俺さー、卒業したら、島出るわ」とか言ってそうな。

あれ?なんか飛んでる、魚?すごいジャンプしてる。

上の写真の拡大図。何枚か撮ってたら偶然一枚だけ写ったもの。これはトビウオ?なんだろ。しかしかなり高くジャンプしてて、最高点でこの倍くらいの高さ、2-3メートルは飛んでた気がする。あまりにも高く、滞空時間が長かったから、離れてきてもその存在に気付いたくらいです。

なぜこの魚は飛ぶのでしょうねー。エネルギーがありあまっているのか、それとも承認欲求のなせるわざか(まさかね)。

甲板を通り抜ける海風がめっちゃ気持ちよくて、森くんも「いや~、いいですね~」と地元民というよりは観光客化してました。

ほんの10分ほどで由良港に着きます。片道250円のお手軽だけど爽快な旅。おすすめ。

接岸して、今度は自分らが下船。下船することをdisembarkって英語でいうだけど、オーストラリアにいって最初の頃、マンリー行きのフェリーでの放送で言ってたけど聞き取れなかったことを思い出した。「ディセンバー?12月?え、なにそれ?」って。

とりあえず船着き場の待合所とおぼしきところに行ってみる。

なかはこんな感じで、レンタル自転車とおぼしきチャリンコが並び、コピー機が置かれていたりする。島内の公共インフラって感じかな。

愛媛みかんの産地でもあるのでご当地ジュースもあるんだけど、1200円は凄いなー。この値段のくせに性善説でやっているという。やっぱ治安いいのね。

駅前には唯一のカフェがあるのだけど、あいにく定休日(森くんが調べてくれてたとおり)で、弁当もってきて正解だよね。
隣が空き家バンクなんだけど、あんまり活用されてない感じ。左端の数字は、船の時刻表だと思われます。

そのお向かい(待合所の隣)には生協のスーパーがあるんだけど、今日は定休日。スーパーが定休日って、初めて見たかも。

さしあたって島で何をする予定もなかったんだけど、もらった地図にある近くのビューポイントまで行ってみようかとなったんだけど、結局行けずじまい。

地図によるとGSと書かれているガススタの手前を左折して、うねうねいけばいんだけど、そのGSがよくわからん。「あれじゃないすか」と見ると、農協の建物の裏手にポンプが一基置かれてて、多分そのことかと。

島の小道を進む。だーれもいない。
明るい陽光と不思議な静寂。ここまで徹底的に誰もいないと逆にシュールな気分になってきます。SFとかB級ホラーとかで、「いったい村の人たちはどこに行ってしまったんだあ?」(みんなやられてゾンビになってる)。

というのは冗談にしても、確かに鄙びてはいるのですけど、荒廃感はまったくない。どこを見てもきちんと手入れされていて、現役バリバリでやっているのはわかる。寂(さび)れても、廃(すた)れてもいない。チリひとつ落ちていない。

おそらくは畑にでてるか、フェリーに乗って松山市に通勤通学にいってるのでしょう。僕らは遠足気分ですけど、地元の人にとっては余裕で通勤距離でしょ?感覚的にいって東京だったら東京駅から渋谷のちょっと先くらいじゃない?と思って地図で測ってみたら、松山市駅から由良港まで直線距離で10キロ、東京駅から10キロだったら渋谷を過ぎて下北沢くらいですね。通えますよね。
それに、来るとき車内はガラガラだったけど、ここまでガラガラだったら一両編成でもいいのに(津オフで行った柘植~亀山間のように)、3-4両編成にしてるということは時間帯が変われば結構な人数利用するってことだし。

道はだんだん細くなるけど、こんなところに郵便局がある。

この風情がいいです。

顔はほとんどのっぺらぼうになってる古いお地蔵様だけど、お供えなどきちんとしている様子。

ここから先は農道というか、山道というか、ビューポイントというからには山越えの峠くらいの標高があるんだろうけど、けっこうキツいよ、これ。

多分この横道を進むのではないかと当たりをつけて進む。この時点でちょい高台になってるから多少のビューはある。

しかしこの道、結局は普通の民家にたどり着く行き止まりであることが判明。
おっかしーなーで、近くの畑で働いていた人に観光地図を渡して道を聞くと、「なんじゃこりゃ?こんな道ねーぞ」と。え、地図がダメなの?とにかくもとに戻って出張所のところを曲がれという。

また道を戻りながら周囲をみると、立派な野菜畑。家庭菜園くらいの広さだけど、見事になってますねー。

さっき通り過ぎた郵便局。この壁の瓦の感じが良いなーと思って一枚。 てかさ、外塀に瓦なんか葺いてたら、えらいお金かかりますよ。お寺でもないと普通はしないと思うし、ここはお寺ではない。

この辺でなんたら出張所のところを右とかいうけど、その出張所がわからん。行き過ぎているような気もする。

人はおらんが、猫はいた

気がつくともう一匹いた。

しかしとにかく暑いし、このあたりでビューポイント行かなくてもいいやって気分になって、そのまま帰ることにしました。フェリー乗って、ちょっと歩いて、すぐ帰るという、何しに来たの?根性なさすぎだろうって感じだけど、はい、根性ありませんけど、それがなにか?という気分でもある。

おそらく超人的な根性で全島を踏破しても、この感じが続くだけだと思う。タクシー一台走ってないし、レンタサイクルで廻るしかないが、中央部の山越えは自転車は武器にならない。本気で島で遊ぶなら、もう少し沖合にある大きな島々がいいんでしょう。例えば沖合にある大きな中島だったら、バスはないけどタクシー会社はあるし、宿も食べ物屋もたくさんある。
でもそこまで大掛かりではなく、指ですくってペロッと舐めればいいくらいの感じなので、これで十分です。実際満喫したし。

また待合所に戻ってきたら、森くんが燕の巣を発見。ツバメもいた。あれは育った雛なのか、親なのか。

持ってきた水のボトルは既に空で、乗る時の待合所の自販機で買い、また帰りしなの待合所で懐かしい三ツ矢サイダーを買う。しかしこの商品も長命ですね。僕が二子玉川に住んでた頃からある(幼稚園にあがる前)。当時のライバルはお米屋さんでだけ売っているプラッシーというジュースがあったが、こちらは早々に消滅(森くんも知らなかったくらいだもん)。

待合所裏手に渋いお地蔵様があった。そういえば松江にいったときも立派なのが宍道湖のほとりに立っていたけど、こちらは先のお地蔵様と同じくのっぺらぼうで渋いもの。でも思わず手を合わせたくなるような不思議な威厳はあった。毎日皆に拝まれているからかな。トイレいったり、出航時刻が迫ったりで写真撮ってるヒマがなかったのが惜しい。

二回目の乗船。二回目ともなれば手慣れたもの。

おお、世界的に黒歴史化しつつある3密(とか言ってるのは日本だけで、英語世界では1.5m(6ft)social distance、今月の米公聴会で言い出しっぺ(ファウチ)がなんで1.5mなのかを「覚えてない」「突然あらわれた」としか答えられず炎上している)。まだ高らかに貼られているけど、方言とイラストのほのぼの感が勝っているのは愛媛ならではの人徳みたいなものか。

ところで「けん」は、そのまま使われても違和感なく意味はわかるけど、あえて標準語に直すと「~から」ですかね?「昨日寝とらんけん(寝てないから)、眠くてかなわん」みたいな。あー、違うか、理由を表す接続助詞は確かにあるけど、ここでは「強い決意を表す終助詞的用法」ってやつ?「あとで思い知らせてやるから!」で、「ぞ!」みたいな。
関西弁では「し」ですかねー。「換気しとくし」「離れとくし」。もっとも全国区になってる気もしますね。「そんなの知らねーし」って関東でも言うようになったし(昔は言わなかったので、僕が関西にやってきた当初は「し」用法に戸惑った)。

手前の白壁に赤い広告は、「家屋解体・廃棄物処理はお任せください」という時代感が漂う。でも、後方のJAえひめの建物は大きいですねー。農協がまだバリバリやっている感じがします。

そういえばこの風景でも、、山の中腹まで切り開いて、作付けをしてるっぽいです。蜜柑ですかねー。
そういえば「田村みかん」というのがこの島にあったのだけど、いざ来てみたらさすがにどこにあるのか分からん。行けばわかるってもんでもないのね。

出航です。

「あしたのジョー」ポーズで真っ白な灰に燃え尽きている森くん。というのは冗談で(そこまで疲れてないって)、海風が涼しくて、とにかく気持ちいいんですよ。

あっという間に高浜港に戻ってきました。ターナー島も見えてきた。

着岸ですけど、今書いてて気づいたけど、これ結構角度ありますよ。船の着岸は車の車庫入れの100倍難しいと思われるんだけど(よく失敗してめちゃくちゃになってる映像がX(Twitter)などにあがってる)、ここから廻り込んで、しかし着岸する頃にはスピードをゼロまで殺すのってかなり難しい気がします。

時刻はそろそろ午後4時で、利用客も多いし、夕のラッシュの始まりかな。

高浜駅のキオスク、、というのか売店ですが、これもすごいですね。
シドニーの鄙びたコーナーストア(日本の昔のよろず屋みたいな存在でたまに残ってる)のようなガラガラ棚。野菜の種が売られていたり、看板のDPEってイマドキの子は知らないんじゃないの?僕もひさしぶりに見た。

さてこれから最後の夜の部と帰路になりますが、ここで一回締めます。

 

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