2025年帰省ツアー(13)中野~ディープなヲタ探訪

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日本滞在も残すところ2.5日(0.5は早朝フライト)。
この日は2時から中野で高橋さんのところでお話の予定。

昼飯は、かねてから気になっていた近所のラーメン屋さんへ。
写真撮ってるときは気づかなかったけど、よく見ると、今どき懐かしいバキュームカーがありました。
Googleのレヴューで美味しいと書かれていたタンメン800円を食す。味は、良くも悪くも普通。というか、懐かしいというか、化学調味料の味じゃないの?という気も。昔はそんなのが多かったし。ただ実直そうな親父さんの佇まいは好感でした。他のお客さんはチャーハン食べてる人が多かった。まあ暑いしね、わざわざ温かいスープ麺は食べないかも。

あとレビューでは3ヶ月前の投稿でタンメン700円だったのが、おしなべて100円あがっていました。時節柄値上げラッシュですね。値上げって、オーストラリアでもそうだけど、あの殆どが便乗値上げでしょうね。でも値上げって便乗しないとできないという側面もあります。それまでは事実上の値下げみたいな時期もあるのだから(家賃の高騰とか)一概に非難もできないのよね。

さて、中野駅に着く。南砂町から東西線で一本といいながらも14駅もあるから、結構長い感じはします。

いつもは最上階の教室でしたけど、今回は一階の応接室へ通されました。クーラーが効いてて気持ちいい。高橋さんとしばし歓談。ちょっと遅れて野澤Yoshiさんも登場
2時間近く、けっこういろいろな話題で盛り上がりました。Yoshiさんも、もとは公務員生活長いですから、現場のあれこれも知っておられるし。
もっぱら時事経済ですけど話題は非常に多岐にわたってて、多すぎて再現できません。思いつくまま断片でいうと、まずは高橋さんのやってる教育界で、なんで高校の通信制とか新しい制度がどんどん出てくるかといえば、卒業しやすくすること。義務教育の中学までは1日も登校しなくても卒業させることが法律上可能らしいのだが(出席しなかったのでダブらせてほしいという生徒・親の意向(クラスのいじめを避けるため)を無視して進級させた学校側を訴えたケースがあるらしいのだが、結果的には敗訴=進級させて良い=があるそうな)。
そのココロは、人手不足の現場においては「面倒くさい事例」に関わってる余裕が全然ないのでちゃっちゃと追い出したいからじゃないか。人手不足でいえば、最近は教師なりたてでもいきなりクラス担任やらせたりするらしく、それは無茶だと。高橋さんの時代には公認会計士だって会計士補を3年やるし、僕のいた法曹界でも裁判官は最初の10年は判事補で一人で裁判やらせてもらえない(地裁の合議部でペーペーの左陪席をやる)、弁護士だって僕らの頃の2年研修(修習)のあと、普通はイソ弁で数年やる。それがプロの世界で、最初の数年は丁稚のように小突き回されながらもスーパーバイザーに現場の機微とノウハウを教えてもらわないと実務はできない。だって本に書いてあるようなことで済むケースなど一つもないんだもん。だって人間世界は魑魅魍魎なんだもん。鬼太郎だって目玉の親父というメンターが’いるではないか。
それを考えると先生かわいそーと思うし、なり手が少ないのは無理もない。初年度で年収1500万くれると言うなら考えないでもないけど、そんなにくれないでしょ。
しかも最近は評判がだだ下がりだから、授業参観でもないのに保護者が授業を見に来て(監視)、なんかあったら文句を言われる。どんな仕事もそうだけど、横でじっと見てられたらやりにくくて仕方ない。
でも未だに古臭い「金八先生」的な熱血を求める国民のニーズもある。教師側に時間と体力のゆとりと、自由裁量の幅が十分にあればそれもできるだろうけど、今はそんなの全然ないしね。

ちなみにオーストラリアでは、公立はドライなもので人格教育はやらない。カリキュラムに沿って教えるだけ。また教室の生徒数も日本よりは遥かに少ない(20人内外かな、詳しく知るものではないけど)。給与も日本よりは良いのではないかな。にもかかわらず燃え尽きてやめていく教師がほとんどだという。
いっとき柴田くんという卒業生がシドニーの学校の清掃バイトをやってたことがあって、もう自分で掃除しないからめちゃくちゃ汚し放題らしい。「あれは、しかし、生徒に掃除させるべきですよ、自分で散らかしたら自分で片付けるという基本は叩き込まないと」と言ってました。
そういう人格教育をやってくれるのが私立で、でも費用がべらぼうに高い。近所のオージーのおばさんと話をしたけど、途方もなく高くても、It’s worth(それだけの価値がある)と言ってましたね。他人に自分の子どもの「躾」をやらせようと思ったら年間数百万のコストがかかる、そのくらい面倒くさい作業なのだということでしょう。日本では無料でやってもらえる感覚があるけど。

とにかく人間相手のケアというのはとてつもなく面倒くさいし、死ぬほどコストがかかる。教育のみならず、裁判だってそうだし、そして介護もそう。蛍池オフの流れでいえば、これらは資本主義の原理に馴染まない。もっと言えば人間そのものが資本主義になじまない。人間の認知構造が相対的でフレキシブルだから定量的ではない。数字に馴染まない。「個性」そのものが資本主義的ではない。褒め過ぎたらつけあがってダメになるし、褒めなかったら凹んでダメになるし、その微妙なさじ加減は数値的なものでは測れないし、同じ人間でもスチュによって最適解が変わる。ほぼ毎日変わる。超面倒くさい。恋人に対して、同じ褒め言葉を版で押したように毎日連発していれば良いというものではない。しまいには「馬鹿にすんな」と怒られる。難しいんだよー。You know that.

ちなみに介護や年金その他で破綻するのは当然すぎるほど当然で、戦後の「産めよ増やせよ」で人口爆発があったからです。団塊の世代で、ここで膨大な集団があり、徐々に年をとっていくから、早晩収支が合わなくなるのは、昭和40年代の頃から言われていた。僕も覚えているけど、「言われていた」どころではなく、「叫ばれ」ていたし、なんなら「絶叫」されていた。警告されていた。でも、夏休みの宿題と同じで、最終日に地獄になるのがわかっていても、毎年それで地獄を見ていても、それでもやらないのが人間です。わかっていながら過去50年間シカトしてきた結果がこれから来るだけのこと。不思議でもなんでもない。
だけど翻って考えると、じゃあ人間を増やさなかった方が良かったのかといえば、そうではない。あそこで人口が増えた(客が増えた)からこそ、国内市場が一定規模を越え、損益分岐点を越え、日本の企業は順調に育った。韓国は国内市場が少ない(日本の半分以下)から、途中から嫌でも海外市場を目指さないと生き残れなかった(だからSamsungにせよLGにせよ世界に通用する企業が残る)、スウェーデンなんかもっと小さい(日本の10分の1)からVolvoにはじまり、IKEA、H&M、エリクソン、Spotifyなど最初から国際市場を目指した企業が出てくる。
日本はそんな頑張らなくても国内市場で開発費を回収できたからめちゃ有利だった。だから短期でここまで裕福になれた。それもこれも産めよ増やせのおかげで、その付けがこれからくるとしても、それはもう甘受するしかない。無いなら無いなりに工夫してやっていくしかない。そういうの得意だと思うけどなー。

さて2時間ほど話し込んだあと、高橋さん指導の中野街歩きになりました。
高橋さんの学校の入口に掲げられていた合格者(税理士試験)。見ると高校生で受かってる人がゴロゴロいるのね。史上最年少という人もいた。また税理士試験だけ科目別に合格者が出るので、「2科目合格」とかいう欄もある。

街歩きのはじまり。

これが予想外に面白かったですよ。中野というのはそういう町だったのかーと。面白いな、ここ。

まずは再開発。

高橋さんの学校の前の通りのところまで駅が拡張され、右手の工事現場に大きな階段が作られることになるそうです。知らない間に勝手に「駅前」になってしまったので、棚ボタ状態。
現状は、駅までこういう道を通っていかねばならないのだけど、ここに出入り口ができたら格段に便利になりますよね。

これでまた含み益が~って話ですけど、土地建物等は個人資産ではないそうです。親父さんの代で公益法人化したので、資産は全部公益法人のもので自分のものではない。だからといって国のものでもない。なかなかわかりにくい宙ぶらりんな感じで、だから大きなお金を扱う場合は、法制度や概念に精通してないといけないという話ですね。

駅南口の風景

反対側の北側
取り壊しが決まったサンプラザが悲しい

駅の北口で来年開業予定の新駅ビルatre
写真右手に紐が写ってしまったのだけど、他に代替がないので我慢してください。

2年前から閉鎖されているサンプラザ。中野といえばサンプラザというアイコンなんだけど、今は中ぶらりん。老朽化で立て直しは仕方ないにしても、工費がべらぼうに上がり挫折。タワマンにするという案もあったけど、町としてどうなの?という意見もあり。ミュージシャンなどからは惜しむ声も多いけど、なんせ巨額なので数百億も誰が払うの?というと、これも難しい。


そのとなりの旧中野区役所も取り壊し予定(新区役所は既に別の場所で稼働)

この駅前超一等地をどうする?です。今は白紙凍結だけど、僕が思うに要は金がないんですよねー。イケイケの上昇期だったら多少無理しても先行投資すればいいけど、気分的にそれはない。外国資本を持ってくればいいんだろうけど、そういうのイヤでしょうしね。シドニー空港も、国際投資団のコンソーシアムが所有してるのですが、金融絡みでやるとカネカネになるのですよねー。空港の駐車料が馬鹿高くなるわ、電車の料金も空港アクセスフィーで5倍くらい高くなるわ、もとがカネカネ系だからどうしてもそうなる。それでいいならタワマンで高く売りつけて、売り抜ければいいんだろうけど、そうなったら皆の中野じゃないのよねってことで区議会で否決。まあ、ある意味、区議会も健全に機能してますね。今のところは。

昔からある謎の黒いビル(笑)。一等地なんだけどなんか語られることも、利用されることも少ないビルらしい。

街角にあった中野の駅の航空写真
真ん中のサンドイッチみたいな三角形ビルがサンプラザ

やたら敷地の大きな一角があります。道幅は広く、街路樹がきれいで、建物も大きい。あとで述べるごちゃごちゃした下町エリアとはまるで違う。

高橋さんから「中野といえば?」と問いかけられ、昔、陸軍中野学校があったんですよと。ああ、なるほど。そして中野の警察大学校もあった。警察大学校も既に移転し、今はその広大な跡地にビルや警察病院などがあるそうです。
まるで大学のキャンパスのようなエリアになります。

これが新中野区役所
外壁がアーガイル模様でカッコいいのだが、無駄な経費だとか議会で叩かれて、区長が、いやこれは外壁の足場を作るのに便利だからとか言ってたらしい。

折しも前で台湾のイベントがありました。小籠包の屋台とかあって。こういうのシドニーでもよくある。

中野区役所の中

区役所らしからぬ明るくカッコいい
今回、手続きなどで何度も京都の役所に行きましたけど、あちらは古色蒼然としていてえらい違いで面白かった。

さて、舞台は一気に反転して、昭和というか戦後から変わってないかのようなごちゃごちゃした楽しいワンダーランドの一角へ。

高橋さんのお目当ては、中野ブロードウェイビルで、50年前に斬新な建物として登場したそうです。奥まったところにあって、今なら絶対建築確認は下りないだろうビル。

そこの足元にはアーケードの商店街

その一角にまんだらけがあるわけですが、ここ一軒だけではなかった。

一軒だけではないどころか、20も30も細かいジャンル別店舗が、ブロードウェイビルの商業テナントエリア(全4階)のあちこちに散りばめられておりました。
まんだらけって中野発祥だったのですね。なんとなく神田界隈か下北沢あたりかと思ってたけど、中野のヲタ力を見誤っておりました。すみません。

このブロードウェイを見るわけですけど、ざっと見るのではなく、一軒一軒丁寧に見て、高橋さんもかなり通い詰めてる感じがしました。
このテナントは地上と3階がメインなんだけど、エスカレータもない地味な2階と4階がディープで穴場らしいです(笑)。

このへんはメジャーな一階だったかな。凄すぎて何の店だかわからん。

お約束のような懐かしいアイテムが。おお、メフィラス星人ではないかと分かってしまう自分も大概だけど。

ミニカーの一角。ミニカーのショップも多かったですよね。高橋さん車好きだからよく見るそうです。

小学生の頃の帰り道で、僕もよくショーウィンドウを食い入るように見てました。当時はマッチボックスとか言ってたけど、そんなの氷山の一角らしく、ミニカーの世界はものすごく広がってるのねというのが分かりました。

フィギアですけど、これがまた色々あって、

細かく区切られたショーケースの店がたくさんあって、「ケース貸し」というらしいです。ケースを借りて、自分の作品や商品を並べて売って、ショバ代と上がりの◯%を払ってという感じなのかな。ケースごとに全然違うし、値付けの基準も統一してるわけではないので、掘り出し物がよくあると。

しかしこういうのにハマりだしたら泥沼ですよねー(笑)。面白すぎるから麻薬みたいなもんだ。

王道のレトロ古書。

しかしこんな古い雑誌、よく取っておいた人がいるよなー。このジャンプ、年代的にいって、僕も読んでた気がする。

背表紙のキャラで、これはアストロ球団で、これはプレイポールの谷口くんで、これは大ぼら一代かしらとか、わかってしまうわ。

極めつけはこれで、
高橋さんも感心してたけど、本当によく取っておくよなー。家のスペースが無尽蔵なのか、普通引っ越しとか卒業とかどっかの時点で捨てるもんだけどね。72年版で2万2000円かあ。エレキのレスポール58年ものとかそんな世界だわね。しかし2万円払ってもこれが欲しいという人がいるということですよね。世の中広いわ。


70年万博と、ぺこちゃん人形

小さな店が多いから全4階といえども広い。

これはフィギアではなく、女の子が自作のお人形さんを作るコーナーで、その部品(ウィッグとか、顔とか)を売っている。こういう市場や取引があるなんて知らなかったよ。

外人さん用なのか日本語Tシャツ。海外の意味不明日本語とは違って、ちゃんと意味もユーモアもある立派なものですけど、これを着て日本を歩く勇気はないかもですね。


こういう意味もわからんディープな一角もあれば

普通に地味な商業テナントもある。でも最初入るのに勇気いりそう。

これは昭和裏町再現ですけど、インターホンで開けてもらわないと入れないという。常連さんとか濃そうな気がしますね。

伏見稲荷みたいな一角で
この頃にはだいぶ疲れてきてます。どんだけあるんじゃって。

外人さんのご一行様も熱心に見ておられました。この人たちとなんどか遭遇したのですが、熱心なのは親の方で、子どもは跳ね回って遊んだり、手持ち無沙汰な感じでしたね。親がヲタなんでしょうね。彼らにしてみれば、往復航空運賃数十万かけても来る価値のある聖地巡礼なのでしょう。てか、どっから調べてくるのよ?という気もしますが、いまは情報凄いですからね。

本当はこの写真の10倍以上あるんだけど、いちいち写真撮ってられなかったのでこのくらいで(これでもお腹いっぱいだろうが)。

まんだらけの広告もありました。給料30万円也。

 

それと今回やたら目についたのは高級腕時計の店。買い取りと販売と。
中には一個1800万円の時計もあった。なんでこんなに多いのか、こんなところで時計の売買やって、なにがどうメリットなのか?これをめぐって高橋さんが推理してくれてました。正解が示されるわけもないので、推測なんですけどね。いい加減なことも書けないので、ミステリーにしておきます。

ブロードウェイの店舗は地下まであり、地下は普通の八百屋とか惣菜屋さんとか、ほんと昔の商店街であり、戦後っぽくすらあった。

ビルから表に出ます。こちらがわの出口はこんな感じ。

店の外もゴチャゴチャ感満載。

その中の一軒に入りました。


ということで飲み会のはじまり

歩き疲れたこともあって、ビールが美味い。
お腹も減ったしガンガンいきました。

日本酒にも手を出し

追加注文しまくって

皆さん出来上がってました

この店店内禁煙じゃないのですよね、今どき珍しく。僕とYoshiさんには天国ですけど。
ここでも小難しい時事議論をさらにディープにしてたのですけど、もう酔っ払って忘れてしまった(笑)。

さんざん飲み食いしておひらきになりました。

もう一軒とか誘っていただいたのですが、ノーマルだったら行くんですけど、さすがに不案内な南砂にまた14駅かけて戻るのが面倒なので次回にしました。
いや、前回、僕が夜のフライトで羽田に向かったあと、皆で中野で飲んだと聞いて悔しかったのですが、これでリベンジできました。中野のことがだいぶわかったし、それ以上に楽しい飲み会でした。

後日談ですが、最後の最後でやらかしました。南砂町って快速止まらないのですよね。東陽町で降りなきゃいけないのに、降りそびれた(てか自分の乗ってる電車が鈍行なのかどうかも気にしなかった。地下鉄なんだから全部鈍行だろって)。中学のとき門前仲町で南砂の友達の家に行ってたから知ってた筈なんだけど、とき既に遅し。結局浦安までいってから、折り返して来ました。ついたら結構な時間になってました。

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