オーストラリアの移民政策変更?~政策じゃなくて政局話

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先週は、あれこれ新聞記事に移民枠を縮小するだのなんだの書かれてましたし、ご存知の方も多いと思いますが、僕もぱーっとメディアを通覧してみましたが、うーん、これ、「カラ騒ぎ」だと思います。

本質は、政権与党内部での権力闘争であって、双方陣営がジャブの応酬をしました、その際のお題がたまたま移民政策でしたってだけだと思う。

まず西軍東軍のように陣営わけをすると、現在の政権与党、リベラルとナショナルのコーリション(連立)与党ですが、現首相のターンブル氏とその片腕の経済担当のスコット・モリソン氏。相手方が、一代前のトニー・アボット元首相で、ターンブル氏ほか党内のクーデターのような形で失脚したんだけど、まだ虎視眈々と狙っているという。その陣営で次は俺だと狙っているのが、現在の移民相のピーター・ダットン氏ではなかろうか。

僕が見るところ、アボットはトランプ的というか、劣化右派というか、国民に恐怖を植え付けて煽って支持を稼ぐという、どこの国にも必ずいるお調子ものだと思います。その前のジラード首相の代の炭素税政策なんかでも、このままだと電気代が暴騰してみんな破産するぞみたいなキャンペーンして首相になったものの、やったことといえば、アメリカと組んで軍事費あげて、福祉削減して、環境保護削減して、肝心な電気代はといえば、たしか1セントくらいしか安くならなくて、僕も詐欺じゃと思ったもんです。アボットは、男尊女卑マッチョ的なイメージが強く、女性の人気は少ない。まあ、昔のタイプのおっさんですわね、日本にも大量に生き残ってる。

一方ターンブルは、本格的に正統派な政治家だと思います。ただし、真面目で温厚なだけに、ポピュリズム的政策を打ち出さず(それは良いことなんだけど)、なかなかメディア映えがしない。政治家なんかそれでいいんだと思うけど、「なにやってるのかわからん」という仕事してる感も乏しく、30期連続で支持率がちょっとづつ下がってると。このまま次の選挙になったらやばいぞみたいな感じは与党内部でもある。

しかし、かといって国民的に嫌われてしまったアボットをまた出すのもねー、自殺行為だよねって気もするし、ここは堅実な辣腕であるスコット・モリソンあたりが次世代かな、どうかなってところでしょうか。

ここで、ピーターダットン移民大臣が、アボットの後をつごうとして(のだと思う)、「存在感を出そう」ということで、自分の担当の移民問題について、先走った発言をしたのがよく日本語情報に載ってる「移民枠削減」です。
Government’s immigration tweak sees overseas Asians out, integrated Kiwis in

これに対しては、ターンブル首相が、速攻全否定してます。
Turnbull says ministers, not cabinet, discussed migration numbers
の記事の中で”
Turnbull subsequently declared the report “false” and “completely untrue”.(そのレポートは虚偽であり、完璧に嘘だ)と何度も否定した)。
別の記事で引用されている発言では
“It is completely untrue, it is completely untrue, it is completely untrue,” Turnbull said on Tuesday. “The article, the claim in the article, is false. Full stop. OK? Full stop.”
「完全に嘘です。完全に嘘です。完全に嘘です。その記事は間違いです、マル。それ以上説明する必要すらないです。間違いです」
か~なりムキになって否定してます。

まあ、相当ムカついてたんでしょうね。自分のところの閣僚が、政権に色目使って変なこと言うから、「われ何ぬかしとるんじゃ、ぼけえ!」くらいの感じ。

これに対して、呼ばれてないのにアボットが、「首相がいってるのはおかしい」とかまた攻撃する
Tony Abbott says Malcolm Turnbull has his ‘knickers in a twist’ over migration policy

言った本人のダットンちゃんは、
Peter Dutton contradicts Turnbull on immigration

のなかで、苦しい言い訳をしてるのがちょっと笑えます。ターブル首相と話が違うじゃないかって点で、「いやいや、首相の現状維持(減らさない)という決定には全面的に賛成しますよ(I’ve seen the comments of the prime minister yesterday and I fully endorse those.)とあっけなく日和ります。
じゃああの発言は何だったのよ?となると、「いやいやいや、そういう政策についての色々な意見というのは常に議論されてしかるべきであってですね、それは閣議であったり、他のさまざまな集まりであったり、いろいろな議論はあるわけで」ということで、「政治家が政策について議論するのは普通でしょ?」ということで、英文だからわかりにくいかもしれないけど、これって典型的な「一般論へのすり替え」ですよね。

ということで、一連の過程をまとめてみれば、ピーターダットンが色目つかってちょっと目立とうと、いらんこと言ったら、速攻首相からにべもなく全否定を食らって、しゅんとなって、火消しに必死になってると。そこを外野からアボットがやいやい言っているというのが全体の構図だと思います。「思う」という新聞記事を数個並べてみれば、そうとしか読めないんだけど。

それを、「来年は移民枠を減少」みたいな情報がひとり歩きするのはいかがなものかと思います。

これは「政策」の話ではなく、「政局」の話でしょ?

また「選挙対策」としては、そういうことを言うと票が取れる地域もあります。オーストラリアの田舎は失業率が馬鹿高いですし。それは別に移民のせいか?というと微妙(てか違う)んだけど、誰かを犯人にしたいという心理はある。都市部は職的にはいいんだけど、日に日に激しくなる渋滞で「人多すぎ」感はあるのよね。僕自身、ハンドル握ってて、もう人を増やすなって思うもん(笑)。
だから、選挙用のくすぐりを入れるために、その種の話はアリかと思います。

ただし、選挙用にそれを言ったからといって、それで当選するとは限らないのよね。オージーの日々の生活課題でいえば、移民なんかそう大した重要性ないでしょ。自分の職やら託児所やら介護やら家賃やらいくらでも重要な問題はあるし。さらに、それで選挙に勝ったからといって、そのとおりの政策をするとは限らない。だから何段階もの先の話です。実際、エッセイ859で書いたように永住権の数はココ数年ずっと高止まりしてますし。

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ついでに面白いニュースがあったので、

ビザ用ゴーストレストラン

Visa fraud allegations at Coast ‘ghost’ restaurants

これはサンシャインコーストのレストランなんだけど、二軒のレストランがあり、レストラン現物はあり、テーブルも用意されており、WEBサイトもあるんだけど、全然営業していない。ビザのための「見せ店」みたいな存在ではないかと調査されている由。すごいな、ビザ詐欺のために店まで用意するか?というと、なんか謎のオーナーがおって、結構あれこれやってて(給料踏み倒すわなんだかんだ)、この店もラインセンス取ってないらしい。そんなこともあるのねーという話。

シドニーの工事&Chatswood~Epping線7ヶ月間閉鎖
もう一つは、オーストラリア国民、てかシドニー市民が真剣にムカついているのは、George Stのライトレールがいつになったら出来るんじゃい、あれだけのことに何年かかっとるんじゃ?ということ。そして、今度ノースから新たしい路線工事をしてて、今、Crowsnestあたりがすごいことになってますが、その工事のために、Chatswood~(マッコーリー経由)~Epping線が、この9月30日から7ヶ月間閉鎖されること。
Epping to Chatswood train closure will be before all promised road upgrades, Ryde Mayor says
そのために道路を拡幅して特別に臨時バスをバンバン走らせるというのだけど、道路拡幅なんかまるで間に合いそうもないので、Ryde市長がブチ切れているという。
、”They value ribbon-cutting over the convenience of thousands of employees and thousands of residents here in the City of Ryde.”
“The timing of this shutdown can only be put down to trying to get it re-opened before election day,”

何をそんなに怒ってるかといえば、これまで「やる」と言っていた道路拡幅も全然進んでないし、こんだけ遅延させながら、なぜこの時期に7ヶ月も鉄道封鎖するのかといえば、「ちょうど選挙の前あたりに開通のテープカットができるように」ということだろうと、要は選挙でカッコつけたいためだけに、市民にクソ迷惑かけている。実迷惑を被るエリアの自治体としては、そりゃ怒るわな。

同じような「選挙とテープカットと日程調整」批判は、シティからKingsfordのライトレールの遅延についても言われてます。

イチ市民として普通にムカついているのは、その種の話であって、移民の数がどうとかいうのはそんなに重大な話ではない。大体457(TSS)ビザだって、全労働者数の1%にも満たないわけで、日常生活しとったらそんな大きな話でもない。

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