Newsweekの記事:博士を取っても大学教員になれない「無職博士」の大量生産

Pocket

Newsweekの2018年1月25日付の記事です。

内容的には、昔から言われている「ポスドク」問題なのですが、改めてかなり深刻=というか遡れば1975年から無茶苦茶になってきてたんだ~とか、新しい傾向などもあって、シェアしたいと思います。

詳細は記事をご覧になっていただければよいのですが、かなり考えさせられるグラフが載っていました。

グラフ青い折れ線は博士課程終了者数の推移
オレンジ色は大学教員の需要数です
これでわかるように、博士課程卒業者数と需要数が均衡していたのは、1975年くらいまでで、以後どんどん卒業できても大学に残れない人が増えてきます。それもどうしようもないくらいギャップが出てきているのは1990年以降で、2010年くらいまで途方もない需給ギャップが生じてます。現在、博士課程を卒業しても大学に残れるのは7%、卒業生14人のうち13人はダメだというから、かなり厳しい。てか、就職システムとして考えたら、ほとんど機能していない。

時の政府は90年に「大学院重点化政策」いうのを打ち出して、どっと大学院入学者を増やしたのだが、それは「社会の高度化に伴い、博士号取得者に対する民間からの需要も増えるだろういう見込み」からそうしたらしいのですが、結果論でものを言っても仕方ないのですが、かなり残念な政策だったといえます(まあ語りだしたら、文科省の天下りを増やそうとかいろいろ思惑はあったのかもしれないけど、それはさておき)。
しかし90年当時の判断の当否を問わないにしても、それから20年以上ほとんど放置していたように見えるのだけど、本当に放置してたのか?という気もして、そこも疑問です。

結果としてどうなってるかというのが次の表です。

さすがに「ポスドク」問題が一般化して学生も控えるようになったのか、志望者は激減しています。2003年と2017年とを比べてみると、人文社会はほぼ半減ちかい0.57、理工系ですら0.68です。意外と保険、教育が健闘してるんですけど、なんでなんですかね?なんか理由あると思うのですけど。

逆に、いい意味での高齢化が進んでます。特に60歳以上の伸びが1.7倍ですごい。退職し、余生の目標を博士号取得に定めたというパターンですね。もともと研究学問と就職を引っ付けるほうがおかしいっちゃおかしいので、こういう傾向は良いともいえます。

あと25歳未満や25-30歳の若い層は0.7倍という正しい将来判断をして減少をしてるんですけど、30代以上がまだ1倍(ほとんど変わってない)のは何故なんだろう?今更辞められないとかあるのかな。それとも社会人入学の比率が増えたのかな。

というか、2003年の時点、上のグラフでいえばほぼ絶望的なのが明瞭になっていながら、なんでそんなに大量に進学してたのか?って素朴に疑問です。就職なんか考えずに純粋に学問的興味に熱中していたのか?でもその後減少してるんだからそればっかではないでしょう。

思うのですが、学生の志望決定って、大体10年から20年遅れる、社会の動向とか経済構造とか見てたらヤバいに決まってるのに、それから10年20年変わらない。博士課程だって、グラフを見てたら1985年くらいの時点で、「あ、こらダメだな」って判断するのが普通だと思うんだけど、それから30年くらいしてから減り始めています。これは一体どういうことか。単に世間知らずなのか、それともそういうヤバい情報を当局が出さないからなのか。

以上は博士課程についての話であり、本当はここで修士課程についても並べて論じるべきなんでしょうが、とりあえずはこれだけにとどめます。あとは自分の宿題にしておきます。

ときに、僕の前職の法曹界もそうですが、今の日本の問題って、だいたい1980年代くらいから始まってることが多いです。延々手付かずでいながら(心ある人たちから散々警鐘は鳴らされていたのだが、シカトされて)、今更ながら問題になっているというパターンが多い気がします。年金だって80年代からダメだって言われたしね。昨日今日始まった問題ではない。

Pocket