レストラン16(その3)~魚づくしの創作懐石コース

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なんか「16」ばっかで恐縮なんだけど、美味しいんだから仕方がないというか、先日、カミさんのバースデー・ディナーで行ったときに、カスタマイズしていただいた(と思う)凄いコースになったので、これはちょっとお知らせしたいと思いました。

日本人同士ツーカーというか、イタリア料理なんだけど、「(ほぼ)魚づくし」という珍しくも美味しい。
前回、和風懐石みたいと書いてたのですが、それがさらに推し進められて、箸とゴハンで食べたいくらいの感じになっておりました。

まず前菜。
魚づくしと言っておきながら、いきなり悪いんですけど、この生ハムがめちゃくちゃ美味かったです。
生ハム(プロシュート)って18ヶ月熟成モノとか、いろいろ価値ありげなんだけど、実際のところ、すごい薄切りだいうこともあって、味があるようでよくわからんし、あるとしても塩味だったりとか、微妙な立ち位置だったのですね、僕の中では。でも、これは美味しかった。何がというと、なんだろうな?ひとつは食感。ねっとりした重厚感があって、味も単に塩味ではないコクがありました。

懐石でいえば先付のあとのお造りみたいに出てきた、ハマチ(ブリ)のカルパッチョ、、、なんですけど、この厚みとコリコリ感は「お刺身」と言ったほうがしっくりきます。

次がボニート(鰹)でした。タタキというか生節というか、中レアでほっこりした食感と甘酸っぱいドレッシングがおいしく、酢の物的な。ゴハンといっしょに食べたかったですねー。バーサミック(バルサミコ)がよく使われるのですが、あの甘酢ベクトルというのは、ゴハンにあうのかもしれません、今度やってみようかしら(ぶっかけ卵にバルサミコかけるとか)。

ホタテです。ねっとり濃厚なソースもいいのですが、細かく刻まれたイカとかマッシュルームの、コリとか、クニュとか、口中での食感が良かったです。
美味しい店って、こういう付け合せとか脇役が光ってたりしますよね。
ずっと昔、貧乏学生だった頃、息子のあまりの栄養失調ぶりを憂慮してか、訪ねに来た両親高いステーキを食べさせてくれたのですが、肉もさることながら、そのとき食べた付け合せの「絹さや」がめちゃくちゃおいしくて、30年以上たってもまだ覚えてます。え、なんでこんなに美味いの?と衝撃的な。

イカ墨のリゾット、上に乗っているのは雲丹(うに)です。
これはカミさんが16さんのFBページでみつけてキャーキャー騒いでたやつで、気を使って出してくださったのかもしれません。いやあ、すごいですよ。イカスミのねっとり感と、微かに苦味がいいです。目をつぶって食べたら、よく出来た魚鍋のあとの雑炊みたいな。その上のウニも「飾りじゃないのよ」とばかりに存在感があって(飾りになっちゃってる場合も多いのだがけど)、しっかり雲丹の味がしてました。

これはJohn Doryという白身魚のフライです。日本でいえば「マトウダイ」ですね。フィッシュマーケットにいつも売ってて、あれはなんだろうと来た当初思ってました。いつか釣りの好きな人から「マトウダイっていうのですよ」と教えていただいて。でも最初はマトウが「馬頭」をイメージして、馬の頭に似てるのか、どこが?とか思ってたら、あれは射的の「的」のような模様が体にあるかららしいです。
それはともかく、ほこほこの白身フライにアボガドソース。食べてて思ったけど、ほこほこ感というのは、周囲のコロモが、カリッとしてないとダメなんだなーと。すごいコロモが軽いんだけど、でも、しっかりカリッ、サクッとしてて、それがほこほこ感を際立たせる。

メインは、お魚じゃないけど、お店のおすすめのラム。ラムチョップ、オーストラリアでよくありますよね。こっちきて初めて食べたけど、美味いもんだなーと思いました。ローズマリーが定番でついてて。それに、ジャムをつけるのですよね。ミントジャムとか、Fig(いちじく)ジャムとか。肉にジャム?げ、気色悪とか最初思ったけど、食べるとすごいよく合うという。
でも、ここのはジャムなしの速球勝負でした。くにゃあって柔らかくて、良かったです。味も素材メインという。
付け合せ、下にあるのが、たしか芽キャベツだったかな。オーブンでカリッとしてて、それがくしゃあって潰れて、ソースがひたひたしてて、肉に負けず劣らず美味かったです。

最後に、バースデー用のデザートまで用意してくださってました。このデザートが、量があるんだけど、軽くて、つるるっと食べてしまいました。

ということで、あんまイタリア料理を食べにいったという感じがしなくて、創作懐石ですかねー。

お店の方も、だんだんイタリア料理とかいう「冠」にこだわらなくなったのかも。だって、(僕らも含めて)ほぼリピーターばっかっぽいし、イタリア料理が食べたいから来るというよりも、この店だから来る、このシェフの料理だから食べに来るって感じですもん。こだわらないのは、その自信と表裏なのかも。
でも、考えれば、それが本当かもしれないです。シェフの方って、本当は「○料理」とかカテゴライズされるのが、なんかイヤなんじゃないでしょうかね。また「創作料理」とかいう言い方すらも、ちょっと違う感があるのかもしれない。
自分が美味しいと思うものを出してるだけですよって感じでやりたいのかも。

なんでそんなこと言うのかというと、ミュージシャンも同じだからです。彼らも、ロックだから、JAZZだから、ブルースだからとか、カテゴライズされて、ステレオタイプで見られるのに忸怩たるものを感じたりしてるでしょう。バンドのインタビューとか読んでても、「別にハードロックをやってるわけじゃないんだよ」「いいと思うものをやりたいんだけだよ」とか皆さん力説しますもんね。
Led Zeppelinの3枚目なんか凄いもんね。1、2枚目で大成功したんだけど、地上最強のハードロックバンドとか評価が確立して、それに対して「だー!違う!」と言わんばかりのサード・アルバムで、もうほとんど全編アコースティックのフォークソングばっか。ファンに対する裏切りというか、そんなの通り超えて、ファンに叩きつけるみたいな感じの。ビートルズも、ファンの固定イメージを常に裏切るようなことしてますからね、「ついてこれるか?」みたいな挑戦的な。

だから魚づくしとか懐石とか僕の書き方も、だー違う!って言われそうです(笑)。でもお皿を通して対話が出来ているような感じがして、それが楽しいです。ほら、お魚もこんな具合にすると、また違った美味しさがあるでしょう?って言われてるみたいな。気のせいかもしれないけど(笑)。

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