オーストラリアが国境開放しました。
技術移住、学生ビザのほか、トラベルバブルの追加で日韓国籍を持ってたら検疫フリーで入れます(ワクチンフルとか72時間なんたらとかはあるが)。
やったー!って感じなんだけど、ほんとに「寝耳に水」の発表です。
実施まであと10日もないし、2年近く続いた国境閉鎖を開放をするにしてはあまりにも急すぎる。なんで?てか、本当に出来るの?という不安もあります。
モリソン的手のひら返しの胸算用
なぜって、つい昨日まで、モリソン首相は国境開放に否定的だったと報道されてます(てか自分でもそう言っている)。
これは先週のFinacial Reviewの記事です。各方面から国境開けろと催促されてるんだけど、なかなか腰が重いし、クリスマスまでには~とか言うんだけど、具体的に準備されてる形跡もない。
その理由は、来年3-5月に行われる予定の総選挙を睨んで、政治的失点をしたくない。人手不足はすごいんだけど、いうほど賃金はあがってない(物価上昇率の方が高い)から、外国労働者をうかつに入れていいのか問題。そしてコロナが再爆発したときの問題。総選挙前にそれをするのはリスキーだと。
実際、11月1日から、国民と永住者に国境開放したんだけど、実際には飛行機飛んでない。シドニー空港のサイトを見ても、1日10便くらいしか来てない。平常時だったら、朝晩のラッシュ時期は山手線みたいに5分ごとに便が来てたのと比べたら雲泥の差。
また、オーストラリアの国境でニュース検索してもヒットするものが恐ろしく少ない。前は、毎週10個以上記事があったんだけど、最近は週に1-2個くらいしかない(今回の報道で一気に増えたけど)。
しかし、一方では、クリスマス商戦、特にホリデーシーズンを前にした観光業界、来年の新年度に新入生を迎え入れたい大学などからしたら、なにがなんでも今年こそは客が欲しい。でないともう瀕死のレベル。
そのあたり(自分の選挙に有利か)ギリギリまで考えていた感じがしますね。
実施まであと10日もないといういかにも泥縄的な発表をしたのは、各業界ともに12月がリミットであり、これを逃して来年2月くらいからボーダーを開けても、商機を逸するからあまり意味がない。各業界から相当な恨みを買うし、選挙に落ちるかも。やるなら今のうちだと。
うがった見方をすれば、10日前に発表されたって、いきなり出発できるものではない。なので実際に来るのは(観光客は別として)来年の1月以降五月雨的に来るんじゃないかって読みもあるのかもしれない。普通2年ちかく閉鎖したものを開けるなら、3ヶ月前くらいから予告すべきで、皆も準備ができる。しかし、それをすると大量に入ってこられるからコロナリスクもある。だから、「やったんだけど、やってない」という実に巧みな線をついているのではなかろか。
ところで、実際の検疫業務や感染対策をしてるのは州政府であり、州政府ごと予算や人員の関係で入国上限を設けてやってる(学生ビザのパイロットプログラムでは2週間に250人という微々たる)、ここにきて、これまでのサイズから一桁どころか二桁くらい違う(100倍以上)の入国者をどうさばくのか?の実務的な詰めが出来ているかはわからない(てか出来てないんじゃないか)。
具体的には
具体的にあなたが日本人で日本から来る場合どう考えれば良いか?
まず、すでに学生ビザや労働ビザを持ってる人は別として、新規にビザ申請をする場合、移民局はどの程度のペースでそれを処理するのか?という問題は別にあります。いくら国境があいても、移民局がビザを出してくれない、チンタラやってて埒が明かないんだったら、全くなんの意味もないです。
政治家や政府というのはズルいもんで、気前よくバーンと大宣言をするんだけど、それをしようと思うと異様に面倒くさい手続きがあったり、申請しても梨の礫で何もやってくれないから結局意味ないってことはよくあります。
その意味でいえば、もし早い入国を考えているなら、いつでるか分からない学生ビザを日本で申請するよりも、2000円で自動的に取れる観光ビザの方がよくはないか、という気もしますけどね(日韓国籍を持つならば)
つまり、日本で学生ビザを取らなくても、観光ビザでも入れるってことになるのではないかな。
ないかな?と曖昧なのは、例によって、明確にそうは書いてないからです。文脈を普通に読めばそうなるんだけど、そうは明示してない。
例えばこの記事に、
Japan and South Korea who had a “valid Australian visa” should check to see if they were eligible for travel.
(このビザに観光ビザは入るかどうかは言ってないし、事前にチェックしろと)
なお第三パラグラフのfully quarantinedはvaccinatedの間違いではないか。
他の記事、
では、
Vaccinated travellers from Japan and Korea will also be allowed to come into Australia quarantine-free through state programs.
と書かれてて、この ”through state programs”というのが曲者で、州によって違う。つまり州レベルでの実務的ダンドリという別の関門がある可能性がある。
国際留学の団体のトップのHoneywoodのような実務家は、さすがにきちんと指摘していて、
と述べてます。正しいよ、この人。
抜書きすると、
Honeywood said there remains abundant confusion (かなり多くの混乱)about how changes to Australia’s international border would work with states and territory entry conditions.(国境と各州の関係がどう変わるかが不明のまま)
however there is still a dog’s breakfast (めちゃくちゃで整理されてない)around how this aligns with different states’ separate border entry requirement
pilot programs in NSW and Victoria. It is unclear how a broader lifting of the ban on international students will impact these pilot programs, which will see up to 250 vaccinated students a fortnight flown into NSW and on charter flights before Christmas.
現在、NSWとVICでは、パイロットプログラムで、二週間にわずか250名だけという上限をつけている。今回の連邦レベルでの国境開放が、これまでの州レベルでの制限とどういう関係にあるのかは、よくわかっていない。
総じて言えば、いつものモリソンのフライング的な感じはします。
「サプライズ的にいって人気者になろう」としてるんだろうけど、実務的な詰めが出来ているかどうかです。
なんつっても、この人、蔵相時代、「ワーホリ35歳までOK」とかバーンと発表して、世界中を期待させておきながら、その後シカトしまくって、結局何もなしって「前科」がありますからね。
そのあたりは精査しておいた方がいいと思います。てか、今後の状況に注目です。なお注目といっても、政府発表やらエージェントの情報なんかよりも、日本から来るなら、航空会社や旅行代理店に聞いたほうが早いと思います。
彼らは、間違ってもオーストラリアに入国できない客を乗せるんじゃないよってプレッシャーがありますし、失敗したら(結局入国できずまた高いチケット買わされて日本に逆戻り)顧客からボロカス言われるし、SNSで叩かれるから、そこは真剣に調べるでしょう。シカトすれば済む政治家や役所なんかよりも、遥かに正確だと思います。
オーストラリアは意外と官僚国家、行政国家で、レッドテープ(無駄なお役所仕事)も多いし、やたら複雑な規定を作る割には職員がそれを知らないで間違った指示をするわで、恐いですよ。それに新聞記事を読むにも、上に述べたように「解釈」が必要です。