アンチワーク(反仕事)・ムーブメントの広がり
エッセイでも書いたのですが、世界に蔓延している(日本にも、僕にも、もしかしたらあなたにも)「働きたくない病」があるような気がするのだけど、徐々に公に認知されつつあるように思います。
今回はそのなかの一つとして、この記事をシェアします。
以下の論稿は、ファイナンシャルタイムズの記事を紹介したものです。「アンチワーク・ムーブメント」というのがここ数年密かにあったのが、コロナ下の去年、爆発的に増えている。あまりにも増えてきてるので、あのゴールドマン・サックスでさえ、将来の経済予測の(危険)要因として注目せざるを得なくなっているという。
要は、今の仕事があまりにもクソすぎてやる気にならん、こんなんだったらカツカツでもいいから、自分の時間をもっと大事にして、自分で生きているという実感のあるライフスタイルにしたいということでしょう。
この感覚はわかりますし、遡ればエッセイ以前(雑記帳の最後の方~20年以上昔)に、これから世界がつまらなくなる予感と書いたことにつながりますが、実際、仕事が面白くなくなってるのでしょう。
そしてこれは、ちょっと前に(サロンでだったかな)紹介した、
中国の過酷な受験戦争を勝ち抜いた若者が「寝そべり族」になってしまう理由
にもつながると思います。エリートであればあるほど、「やってられっか」という気分になってしまうという。
そのあたりのつながりはまた別に書きますが、ここでは、アンチワークの話。
FTの記事を引用した記事なので、ちょい重複してたりわかりにくかったりするのですが、ご興味のある方はリンクを貼っておきますので出典をあたってください。
以下、僕が行った日本語訳だけ載せておきます。
Reddit’s “Antiwork” Forum Booms As Millions Of Americans Refuse Traditional Employment
Zero Hedge Sunday, Jan 09, 2022 – 12:00 PM
数百万人にも及ぶアメリカ人が伝統的な雇用を拒否するなかで注目されるRedditsの「アンチ仕事」フォーラム
パンデミックによる前例のない経済変調、というか、パンデミックに対して行った政府のロックダウンやビジネス破壊の数々の制限によって、自分との仕事の関係を見つめ直すアメリカ人が劇的なまでに増えてきている。
雇用市場においてなにかが起きているのは疑いの余地はない。
JOLTS data(雇用統計)が示すのは、数百万人のアメリカの労働者が継続的に辞職しつづけていること、そしてそれは低賃金の小売、ホスピタリティにとどまらず、ホワイカラー層にも広がり続けている。直近3ヶ月の求人数の増加数は失望すべき低調なものだった(それでも3月に予定されている連銀の金利上昇を正当化する程度には強かったが)。
パンデミック開始より得られた、仮想通貨やエクィティ市場で莫大な利潤は、多くのアメリカ人に一息つくだけの余裕を与え、その一息ついてる間に彼らは「もう一つの」ライフスタイルを追い求めている。それは、”Vanlife”(キャンピングカーを住まいにする低廉な生活)であったり、自分の小さなビジネス起業、それは単純な犬の散歩であったりもする。
しかし、仮想通貨投機で大金持ちになった人だけが、「伝統的な」仕事から去っているわけではない。ある人々は、素朴なDIYの生活スタイルに魅力を感じて大きな跳躍を行っているし、政府からの気前の良い補助金もその背中を押している。
これほど多くの人々が未知の世界にそれぞれに分け入ろうとしてしているなか、RedditのようなSNSやコミュニティが注目されている。それは重要なデジタル集会スペースであり、企画書を比較したり、経験をシェアしたりしている。それは人々を勇気づけたりもするし、落胆させたりもするのだが、いずれにせよ「アンチ仕事
(antiwork)ムーブメント」と呼ばれる動きに、人々が侵攻していった物語であることに変わりはない。
今では、まるまる一つのsubredditがこのテーマで占められている。
Financial Timesは、アメリカにおける労働参加率がパンデミック以前をずっと下回っているなか、昨年辞職した数百万人のなかには、 “antiwork” subredditのなかで次に進むべき道を見出している状況を報道した。
Doreen Fordというコミュニティのなかの有名人がいる。彼女はパンデミックのずっと前に仕事をやめ、自分の犬の散歩のパートタイム起業をしている。
彼女(フォードさん)は、10年間、ボストンの小売店で働いていて、それに嫌気がさしていた。
2017年、祖母から伝統的な働き方なんかやめてしまいなさいよ、その代わり好きな犬をテコにして生計を立てられるようにしたらいいと言われたのをきっかけに、以来そうしている。
彼女は実際に犬の散歩をしているのだが、同時に他の伝統的な仕事(採用されて給料をもらう)は一切やっていない。にもかかわらず、「こんなに幸福を感じたことはない」と言う。30歳になる彼女は言う、「仕事というのは、精々よく言って、なにかしらズレている(pointless)。もっとハッキリ悪く言えば、品格を落とし、屈辱的であり、搾取されている」
フォードさんは、このアンチワークフォーラムの調整者役として稼働しており、このコミュニティの爆発的に拡大していく過程をつぶさに体験している。2020年の10月には16万人だったのが、21年の末には160万人(1年で1000%)になっているのだ。
この巨大な数値は、ゴールドマン・サックスのアナリストをして注目させるに十分なものだった。
同社の11月のノートには、目下生じているアンチワーク・ムーブメントは、市場の労働参加率に長期的な危険を孕んでいると指摘している。
フォードさんは言う。「あまりにも多くの職が全く無意味なもの、存在していてはいけないものにしか思えません。大した理由もないのに、単に書類をあちこちに押し付けてるだけです。こんなことやってても誰も幸せにならない」。「アイドラーズ Idlers」とコミュニティの住人がそう自称するのだが、総じて言えば、人はいかに働かないで生きていけるか、そこで頑張るべきだ、できれば自分自身の仕事だけで生きていけるのが良い。
仕事を辞めた多くの人は、フォードさんのように彼ら自身のマイクロビジネスを始めるか、生計のために必要最小限度のパートタイムに留めようとしている。なかには居候をしたり、ゴミ箱を漁ったりする人もいるらしい。
このsubredditは2013年に始まっており、最初は1600人ほどの会員数だった。そこでは、伝統的な雇用形態を去ることのベネフィットが、職場におけるクソ上司の話、絶望的な職場環境などが語られていた。
初期においては、圧倒的多数が北米に住む男性だった。うち半数は未だにフルタイムで働いている。いかに彼らの上司が、働く人間のことを気にしていないのかというストーリーで埋め尽くされていた。
amethysttt07というハンドルネームの投稿者は、自分に対して賃上げの約束があったのに、何の説明もなく自分ではなく同僚だけが賃上げになったケースを挙げ、皆に述べている、「念の為に皆様のお耳に入れておきますが、残念ながら、我々は消耗品であり、いつでも瞬時に取替がきく存在でしかありません。いかに貴兄が何時間も奴隷的な努力を捧げようとも、それらが報われることはありません」
他の投稿者(Brotendo88)は、コロナによるテレワークの実情についてこう紹介している。「勤務時間の85%はビデオゲームをやってるね。そんなことをしながら、ボスはドルを稼いでいるんだよ。そして僕はダイム(10セント)を稼ぐのさ。だから、僕はまだこの会社でクソみたいなことをしてるんだよ(That’s why I f**k around on company time baby,”」
なかなかに面白いのだが、しかし、と思わざるを得ない。
こういった人々は、老後の生活を考えているのだろうか?誰も年金福祉などに加入しているようにも見えない。起業するのも良いだろうが、ちょっとばかりの頑張りや、見知らぬ人の好意などではしっかりした生活基盤にならないだろうし、長期的に耐えられる戦略であるようにも見えない。
コインの反対側を見るのも忘れないようにしょう。パンデミックは、早期リタイアムーブメントも引き起こしている。これがまた、労働参加率に対して長期的な問題を孕んでいるのだ。