京都で手巻きタバコを探す話

Pocket

RYO・自分で巻くタバコ(手巻きタバコ)

自分で巻く手巻きタバコ、オーストラリアでは、RYO (Roll your own)といって、BYO(※)みたいな名前で呼ばれてます。

※ここでいきなり一口知識
BYO=Bring your own(bottle)の略=レストランに自分のワインなどを持ち込むこと。歴史的背景があって、オーストラリアも過去に酒に対してメチャクチャ厳しい時期があった(アメリカの禁酒法みたいな)。レストランで酒類を供給することに強い制約を課して、レストランが許可(リカー・ライセンス)をとっても限られた銘柄しか駄目とか意地悪されていたので、特定の銘柄が好きな客を逃すことになる。これではアカンということで、ワイン(その他、アルコール)は自分で持ってきていい、持ち込みアリ制度にしていた。これがオーストラリア英語の超重要英単語の上位に入る「BYO」の語源と言われる。なお一本(or ひとり)あたりいくらの持ち込み料のことをコーケージ、Corkageという。
ちなみに、酒に対して敵対的だったので酒場なんて存在も駄目。でも宿泊所でアルコールを出すのは例外的に許されていたので、パブなどの酒場は「うちは宿屋でーす」と言い張って、申し訳のように部屋を階上に用意し、店の名称も堂々と~HOTELにしていた。その名残で、今もオーストラリアのパブは「~ホテル」という名称になっており、アメリカ人など他の英語圏の連中に混乱を招いているらしい。
なお、酒敵対思想は時代とともに変わり、今では、馬鹿高いリカーライセンス料は政府の貴重な収入源になっている。今やライセンスも取りやすくなっており(その方が政府も儲かる)、BYO自体を認めない店もある。以上はオーストラリアに住むならば、常識として知っておいた方がいいよレベルの一口知識。

話戻って、RYOです。
オーストラリアのタバコは高いです。あれだけマリファナとかドラッグは野放図に(日本人の目にはそのくらいに感じる)放任しているのに、タバコに関しては目の敵のように、まるで魔女狩りのように弾圧している。このあたりの西洋的偏狭さ(クジラを取ったら駄目とか)も問題だが、とりあえず高い。年々上がってる。上がるという通知すらしないで上がる。年に最低1回は上がってるんじゃないか。

結果、一箱5000円以上とかいうアホみたいな値段になり(地球でも最高値という説もある)、国庫を潤している。ただ、同時に、RYOという手巻きタバコという代替策も普通に売られている(Loose tabaccoともいうがあまり一般的ではない)。これは、手巻きタバコ用の葉っぱ(これが一番高いが、25グラムで50-60ドルくらい)。ペーパー(大体5-60枚で1ドルくらい)、フィルター(100本で2ドルくらい)、それに人によりけりだが手巻きマシンがあって、10ドルか15ドルである(方式はさまざま)。
タバコ一箱(20本入り)で25グラムで5-60ドル(本数もまちまちだし、値段も実は日によって違ったりする)、葉っぱ25グラムで5-60ドルなら同じくらいの値段であり、格別それが安いわけではないのだが、実際にはかなり安く済む。僕の場合、日本でセブンスター一箱買うと、1日で吸ってしまったりもするが、手巻きにすると同じ25グラムで一週間近くもつ。5日から7日。だから実質5分の1か7分の1で済む。不思議な話なのだが、話が複雑になるので、これは最後に書く。

さて、今回日本に帰省したわけだが、気分は「なんでも高いオーストラリア」から「なんでも安い日本」に帰ってきぞと期待感に満ちていた。が、実際には、そんなに安いと感じなかった。ここもいろいろ見聞したので他にまた書くが(特に食料品)、タバコも昔ほど安いとは思わなかった。

僕が日本に居た頃は、セブンスター一箱220円くらいが最後であり、以後帰国すると上がっており、2010年に400円とドンと二倍になっているのだが、オーストラリアに比べれば安いもんだというタバコ天国的な感覚でいた。しかし、今回3年ぶりにかえってみたら600円になっている。18年に500円になってたから、その時点でもうさして安くもなかったのだが、今回4週ほどいたので、600円はさすがに高いな、安くないじゃんってしみじみ感じた。

それでもオーストラリアの一箱5000円以上に比べれば夢のような話なのだが、これが手巻きになると数分の1に下がる(実感として)ので、これならオーストラリアの手巻きよりもちょい安い程度じゃないかという気になり、また、最近では純粋に味とか利用しやすさからいって手巻きのほうがむしろ優秀ではないかとも感じていたので、日本でも手巻きタバコを買えばいいのではないかと思うに至った。てか、ある程度事前に考えてもいて、オンラインで値段を調べたらペーパーもフィルターも結構高くて、これならオーストラリアで買ったほうがやすいかもと思い、多少持っていきました(紙巻き機も)。

どうも、オンラインで紙巻きタバコを買えないかと探したら、駄目っぽいです。紙巻きマシンとかペーパーは売ってるけど、肝心な葉っぱが売ってないではないか。まあ、専売制の関係で駄目なのかもしれないか(しかし戦後経済のための専売制とかいつまでやっているんだ)。

京都で手巻きタバコをさがす

そこで、滞在先の京都の実家を起点に、紙巻きタバコを売ってそうな店を探し、実際に行ってみた。これも結構スカが多く、Google Mapであるのに、行ってみたらタバコの自動販売機が置かれているだけとか、そんなのが多く、萎えそうだった。

そんな中、ついに見つけたのが、五条通に面している(縦のスジは東中筋通りなのだがマイナーすぎて知らないので(僕も知らんかった)、油小路通りと西洞院通りの間と思うと良い)気谷商店でした。これがまたナイスなんですよ、昭和レトロのワンダーランドで、そこが面白いから、この記事を書こうと思ったくらいです。

この店、GoogleMapでいえばここです。京都オフをやった月屋さんの近くでもある。

検索すると扉が異様に細いとかでTVで紹介されたりツイッターでバズってたそうだが(例えばここ)、そんなことはどうでも良い。問題はタバコだ。

この店、なにがどうなってるのかよくわからない感じで、表には「漢方ごじょう」という看板があるが、これは二階らしい。タバコの自動販売機の横に・ガレージのような空間があり、自動販売機の背面にキオスクのようなブース空間があり、どうもそこらしい。

入ってみると、一瞬何を売ってるのかわからないような雑然とした小間物の数々。よくよく見るとタバコ系のグッズらしい。おお、秘密の店を探し当てた感。

ただ、あまりにも雑然としてるし、ビニールに入ったままだし、そもそも何を売っているのかもよくわからず戸惑う。自分で見てて探しても永遠に埒があきそうもないので、店番をしていたおばちゃんに話しかける。

このおばちゃんがまたいい味してて、タバコ屋やってるからタバコに精通しまくってるのかといえば、「えーと」とかいいながらカラーのタバコパンフレットを取り出して見てるくらいで(しかも見たら値段も内容も書いてないし)、聞いてどうこうという感じでもない。
しばらく途方にくれていたら、「これなんかよく出ますけどね」と助け舟をだしてくれた。もうそれでいいやって感じで買ってみたところ、これがアタリ。

Amber Leafって銘柄で、小さく「オーガニック」と書いてるやつ。煙草も農産物だからオーガニック栽培ということはありうるだろうが、だからといって身体に良いというものでもないだろうし、どう受け取ったらいいのか(笑)。でも味も強さもストライクで、セブンスター好きなら大体良いかと。

これが25グラムで740円。うれしいことに中にペーパーがおまけに入ってた。100枚入だから、それ自体で200円くらいするから、正味500円かそこらです。これで実際に一週間くらい持つ。

後日また別のCHOICEという銘柄を買う。これはオーストラリアで吸ってる銘柄と同じ名前だったんだけど、しかし、味は違ってて、これならAmberの方が好きだなー。これは30グラムでたしか830円とかそのくらい。ペーパーもついていたけど、ちょい少なめで60枚くらいかな。

都合3回買いに行きましたが、だんだん様子もわかってきて、しげしげと見ると、かなりファンシーなタバコが多い。ファンシーというのは、ヴァニア味とか、りんご味とか、チョコ味とか。僕はそういうの好きではないので、その種のファンシー系を除去すると実数はそれほど多くはないかも。

懐かしい缶ピ(缶入りピース)があった

オーストラリアから持ってきたフィルターが切れてきて、途中で補充したけど、細いやつばっかりで、おばちゃんと一緒に探して、やっとレギュラーサイズをみつけた。200本で340円くらいだったから、オーストラリアで似たようなものだった。

しかしタバコよりも、おばちゃんの方がいい味をしてて、はんなりしたオーガニックな京都弁のうえに、最後の精算のときに、おもむろに算盤を取り出して計算してくれる。おお、ソロバン!懐かしいなー、ソロバンで計算してもらうって、いつ以来だろう。それにソロバンの上手い人には、ほぼ計算間違いがないので安心してられる。ソロバンの使用法からして計算違いが起こりにくいから。形で覚えちゃうからね。電卓なんかは押し間違えというのがあって、これは誰にでも起こりうる。

手巻きタバコの不思議~なぜ消費量が減るのか?

上述のように、市販(出来合い)の紙巻きタバコ一箱も25グラム、手巻きタバコも同じ25グラムなのに、前者は1-2日で消費してしまうのに、後者だと(僕の場合)5日から1週間もつ。なぜなのだろう?以前から漠然と不思議だったのだが、今回、いつもよりも深く考えてみた。いくつかの仮説がある。

まず市販タバコは、手巻きよりも太い。手巻きで一番太いサイズを選んでも、それでも市販のものよりも一回りは細い。つまり一本あたりのタバコの草の容量が違う。

次に市販タバコには燃焼促進剤が入っていると言われている。言われているだけで本当かどうかは知らないが経験的には頷ける。消費が早いのである。タバコに火を付けると、吸わないで置いておいても燃え続け、知らないうちに終わっていたりもする。これが吸いさしの副流煙問題になるのだが、手巻きの場合はそうならない。積極的に吸わないと火が消えてしまう。燃え進んでいかない。

第三にタバコの葉っぱの形状である。市販の紙巻きは煙草の葉を微細に裁断してあるのに対し(ほぐさないとわからないので、一般には認知しにくいが)、手巻きタバコの場合、数ミリの細長くて縮れた形状をしている場合が多い。この差が何を意味するのかというと、推測するに、微細に裁断されて大きめな粉塵状になっている市販の場合、よりぎっしり詰め込めるのではないか。一方、ふぁさっという感じになってる手巻きタバコの場合、詰め込んでもより空気が多く、自然とスカスカ気味になる。パンパンに詰め込めば詰め込めるのだろうが、普通はそこまでしない。結果的に一本あたりの草の量が違ってくる。手巻きの方が少ない。

これらの差は吸い味の差になるのだが、均一に濃密な市販のものに対して、手巻きはどことなく物足りないくらいにしょぼいのである。

一般に市販がメインで、手巻きはその貧乏くさい代用品という固定観念がある。僕もその固定観念に囚われていたのだが、コロナ封鎖が長引き、市販のものが枯渇(日本からくる人に買ってきてもらうパターンが多いので)。やむを得ず手巻きばっかりになっていったのだが、慣れてくると、手巻きの方がナチュラルな感じがする。

まあ、「ナチュラル」というのも曖昧で手前勝手な「記号」なのであるが、巻き方に寄って一本一本微妙に味が違うのに慣れてしまうと、本来そういうもんだろって気分になるし、その差が微妙な楽しみになったりもする。それに慣れてしまってから市販の紙巻きを吸うと、常に均一な品質であるのが、逆に気味が悪くなってしまう。なんか工業製品やプラスチックみたいで、自然の「干し草」感がない。また一本ごとに違うというナチュラル・ランダムがないのが寂しい。

それにタバコを吸うのは、ヤニ切れ中毒緩和剤であり、ビールと同じで最初の1-2口が美味しく、あとは惰性でやってるだけ。だから一口、二口吸ったところで自然と火が消えてしまってくれてもそんなに不都合はないし、むしろ消えてしまったほうがありがたい(続きを吸える)。

第四に手間暇がある。タバコというのは暇つぶしに吸う場合もあり、それはポテトチップスや柿の種、枝豆のようなもので、のべつ食べてるのが当たり前になってしまい、止まらなくなるのと似ている。市販タバコはいつでもレディだから、ほっといたら止まらないときもある。特にパソコンに向かって作業をしているとき、それにストレスを感じてるとき(いやいや作業をやってるとか)はそうである。しかし、手巻きタバコはいちいち巻かないといけないので、その面倒臭さがストッパーになる。慣れてしまえば一本巻くのに(機械を使えば)10秒もかからないのだが、それでも出来合いのものに比べれば、面倒である。そこまでせんでもええかって気になり、結果的に本数が減る。

ところで、タバコには気分転換などの儀式的な側面も大きいところ、面倒臭い筈の手で巻く行為も、気分転換の儀式としては、なかなか乙なものだとも思えてくる。

まあ、要するに慣れたらなんでも良くなるだけのことで、大した理由でもないのだけど、本来の「嗜好品」という原点に近くなるような気もします。コーヒー好きな人が、慣れるほどに、いちいち豆から挽くところから始めるとか、面倒臭い方向にいき、かつその面倒臭さが楽しみになっていくこと、ネガがポジになっていく過程に似ている。

以上の次第で、アンバーリーフを好んで吸っていました。
オーストラリアはタバコの持ち込みが、またヒステリックなまでに厳しく、今は25グラム箱1箱(プラス封を開けたもう一箱)である。以前はカートン単位だったのに、アホみたいに厳しい。でも「25グラム」とグラム数でいえば、手巻きパックの25グラムなら丸々1パックいける(開封済みがもう1パックいける)。市販だと2箱弱、2-3日分だったのが、手巻きだと2週間分近く持ち込める。実際、1日に帰ってきたのが、持ち込んだ1.5パックくらいのものが、まだ残っている。オーストラリアで50ドルのものが、日本で買うと実質500円だから(ペーパーのおまけ分を引くと)、ほぼ10分の1になる。

しかし、問題もあって、日本からやってくる人に「買ってきて~」と気軽に言えないことである。なんせ、手巻きタバコを扱ってる店が極端に少ないからである。仮に京都在住でこの店に行けたとしても、この店頭の状況を目の当たりにして、何を買えばいいのかよくわからないだろうし。

 

 

 

Pocket