西シドニー新国際空港(WSI)が10/25開業する話
オンラインサロンに書いた話なのだけど、こちらにも転載します。
古くからのシドニー市民には、「永遠に出来っこない」と思われていたバジャリークリークの新空港(Western Sydney International、略してWSI)が、気がついたらしれっと開業することになりました。この10月下旬から。
「え、そうなの?」と寝耳に水な感じ。
あんだけ巨大なものを何年も掛かって作ってたんだから、「寝耳に」というのも間抜けな話なんだけど、出来るわけ無いと思ってたし。
今のシドニー空港はもうキャパオーバーで駄目だから新空港が必要という話は何十年も前から語られてました。僕がオーストラリアにきた94年段階で既にあった。
遡れば70年代にその議論が始まり、空港予定地がバジャリークリークになったのは1986年のボブ・ホーク政権の頃。でも政権が変わる度に計画もコロコロ変わり、そんな予算がどこにあるとか、需要があるのかとか言われてました。
そのころは2000年がデッドリミットとか言われてたんだけど、2026年になってもまだ何とかなっているんで、もう作らないんでしょと思ってました。
流れが変わったのは、トニー・アボット政権の頃の2014年で、作ると決め、完全国有企業として立ち上げる(世界の民間企業から金を引っ張ってくるコンソーシアム形式=既に評判が悪かった=にはしない)と。その頃にはシドニー西部の人口がどんどん増えてきたし需要もあるんじゃないかなってことでしょう。そのあとコロナで2年間の国境閉鎖があり、シドニー空港がパンクするどころか閑古鳥鳴きまくってたんだけど、それでも一旦始まった工事は続いて、ようやくこの10月に開業ということらしいです。
ただしかし、もう死ぬほど不便なところにあり、それにつながる公共交通機関の整備も進まないから、実際にはどんだけ機能するのか疑問です。僕自身、あんなところまで行く気はないし、一括パックで無料お出迎えなんていっても、新空港だったら出来ません。もう行って帰ってくるだけで高速料金で5000円近くかかるし(それにクソ高いであろう空港駐車料金もかかる)、どんなにスムースにいっても往復3時間はかかるだろうから、やってらんないからです。語学学校の空港ピックアップサービスも改定され、これまで250ドル前後だった空港ピックアップ料金が、大体400ドルくらいになるようです。150ドルアップくらいだと言われているけど、そんなんで足りるのかなー?という気もします。500ドルくらい取られても仕方ないかも。そのくらい遠いんですよ。
Google Mapをベースに解説入りの地図を作りました。

都心から車で行く場合、Parramatta Rdを西進しつつAshfield/HaberfieldあたりでM4高速に乗る。
これが全体の距離の半分以上を占めますが、乗ってしまえばわりとスイスイいける場合が多い。ただし高いので、上限キャップがあります。10.79ドルを越えたらもう徴収されない。Parramatta 以降はブルーマウンテンまで無料ですけど、そこに行くまでに10.79に達してしまいます。
次にEastern Creekあたりで環状(南北)の高速M7に乗り換えます。そして南下。M7はちょっと走っただけですぐに上限10.50ドルに達する悪名高い高速。長く乗ってると得だがちょっとだけ使うと大損だという地元でも評判が悪いね。
そしてM12という空港のために新しく作った高速に乗り換えて空港へ。
シドニー西部は、まず20キロほど西の、副都心化が激しいパラマッタですけど、普通のシドニーに住んでる留学生などからしたらこのあたりが限界でしょうね。実際にははるか手前のStrathfieldくらいかなあ。
パラマッタからブルーマウンテンの入口(平地の終わり)ペンリスまで、あと30キロくらいありますが、その区間を3つで区切って、最初がブラックタウン、次にSt Marys、そしてペンリス。
ハッキリ言ってブラックタウンよりさらに西になると、もう遠足レベルで、通勤してる人には悪いんだけど、車窓から牛や馬が見えたりもしますし、前方にブルーマウンテン山地の山々が近づいてきて、盛り上がるんですけど、そんなエリアです。
ブルーマウンテン行きは、一直線でM4をガンガン飛ばしていけばいいだけなのでまだ楽なのですが、今度の新空港は、手前で左下(南西)に進んでいくから、より遠い感じがします。
ずっと昔にワラガンバダムというシドニーの水源にいったことあるんですけど、完全に遠足でしたが、その近くです。よくまあこんなところにって感じ。
遠い近いとか言われてもピンとこないでしょうから日本との比較でいいます。
単純な走行距離で言えば63キロくらいで、都心→成田(68キロ)よりもちょっと近い。梅田→関空は50キロくらいだから、それよりはずっと遠い。関空よりも遠く、成田よりもちょい短いくらい。
しかし、空港降りてから都心に行くまでのアクセスが日本とは全然違う。
日本の場合、成田は京成もJRもありますし、リムジンもあります。関空はJRのはるかもあるし、南海もあるし、当然リムジンもある。
しかし、WSIの場合は、「ほとんど何もない」ところに降ろされ、都心に向かうアクセスもまた事実上「ほとんど何もない」と言っても過言ではないくらいです。
ここ気になったのでしつこく調べました。
もしかしたら将来自分が使ったり、お出迎えにいくかもしれないからです。全然知らんではすまんだろうし。
いや、ほんと無いんですよ。
10/25開業で、それまでに鉄道(メトロ)を走らせるつもりだったんだけど、例によって開業2027年以降と延期されており、つながってません。なんでか?といえば、いつもの話で連絡駅のセントメアリーズの駅の工事が遅れ、技術問題が発生し、業者とトラブっているとかで、開業は1年後の27年12月だと。しかしこれもずれ込んで28年以降になる気がする。
ということは着いたところでなんもないんで、代替のリムジンバスがSt Marysまで走るんだけど、このバス、無料なのはいいんだけど、30分に一本しかないのだよ。国際線の航空機一機に何人乗ってると思うんだよ。
しかも在来バスを転用してるだけだから重くて嵩張るスーツケースも全部座席に運ばないといけない。バリアフリーの低床式で、荷物ラックもありますというけど、一人でスーツケースを2個も3個も持ってたりするんだから、車両の半分は荷物ラックになり、またそれでも乗り切れないでしょう。リムジン系の下の収納庫だったら、プロがパズルのように荷物を上手に積み込んでくれるけど、客がバラバラにやると全然乗らんぞ。それが30分に一本?乗り切れなかったら30分待ちって。
それに24時間空港が売りなくせに、深夜になるとこのシャトルバスが止まるんだよね。これも批判の嵐らしいけど。
結論的には使えない。使えたらラッキーなくらい。
それにセントマリーズ駅まで行ってどうする?です。そこからがまた一般通勤車両なのだよ。
ちなみにシャトルではなく在来バスで最寄りの駅まで行く手はあって、Route 790(ペンリス)、772マウントドリット、860などがリバプールなどに行くけど、いずれも30分に一本。
これに対して、民間バスが参入するらしい。
地元のバス大手NSBCグループが運行する、空港利用者に特化したスーパーシャトルWSIがあります。ありますってか、まだ計画してる段階だけど。これも床下収納ではないし、確たる時刻表があるわけでもないし(飛行機が着いたら出るという感じ)、将来的には30分間隔運行を目指す、料金も未定だがタクシーなどよりは大幅にやすくする予定。セントマリーズとかじゃなくてちゃんと都心まで運んでくれるみたい。
まあ、寝てるうちに都心まで連れていってくれて100ドル以内に収まるなら、悪くないですけど、どれだけ使えるかは未定です。
なんで30分に一本とか過疎ってるのかといえば、まずどれだけ飛行機が発着するのかわからんこと。シンガポール航空が乗り入れするらしいって話があるけど、世界の航空会社が争って発着するわけではない。日系のANAもJALも当面の予定はなし。
そりゃそうだよね。日系の場合、オーストラリア旅行の組み合わせとしてケアンズやゴールドコーストと組み合わせ、着いたら半日観光でってタイトなスケジュールでやってるわけで、あんな不便なところに降ろされて、都心につくまで無駄に2時間くらい浪費させたら、観光もないし、土産物屋もないでしょう。スケジュール的に厳しい。
だから頑張って準備しても飛行機こないかも、、という話もあるわけ。ガンガンくるなら、もっと本数を増やすとは思いますけど、様子見でしょうねー。一説によると予想では客の90%は車移動だとも言われている(友人の迎え、Uber、レンタカー)。
大体ですね、航空会社だって、新空港着のチケットを売り出しても、消費者から拒否られる可能性があります。あそこに着くならいくらチケットが安くても意味がない(着いてからの移動に金と時間がかかりすぎるので、疲れるだけ損)と思われるかもしれない。そうなると仮に新空港が発着料をバーゲンしたところで、航空券が売れないなら航空会社も商売にならん。
だもんで皆がみんな、様子見じゃないですか。とにかくどんな感じになるのか動かしてみて、それを緻密に検討して、参加するかどうかを決めるって感じじゃないかな。
実際、世界的に売れるようにするには、新空港から都心まで直通の鉄道はマストでしょう。在来線のツギハギでもなんでも、とにもかくにも、しゅっと一本でいけるという。
それが新規のメトロが1年遅れ、もっと遅れるかもでしょう?話にならない。しゅっと一本なんか予定はあるかもだけど、まあ、無理だろうなー。特に電車は難しいよ。
メトロが出来てセントマリーズ駅まで行ったとしても、そこからは在来線の普通の通勤電車よ。大体小一時間かかって、料金は安い(8-9ドル)けど。でも大荷物抱えて乗り込むのも大変だよ。
あとセント・メアリー駅は、地味だけど昔からある街で、今回大リニューアルしてるし、駐車場も100台増やしたとか言うけど、到底捌ききれないでしょうね。
今のシドニー空港は駐車スペースが万単位で用意されているんだけど、それですら駐車場所をみつけるのに四苦八苦すると場合がわりとあるのだ。だから100台増やしたくらいではどうにもならんでしょう。昔の街だから車線も少ないし。
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これらを考えると、結論的に浮かび上がってくるのは、、、、
新空港は、
(1)カーゴ(貨物)のため
(2)タフなLCC御用達のバッパー様
でも実際にはカーゴだと思いますね。
調べてみたら、貨物便というのは全体の数パーセントだけど、じつは旅客機の収納スペースに結構貨物を入れているらしいです。だから潜在的には結構ある。
これまでシドニーの航空物流はシドニー空港一本でやってて、旅客機の下とかにも詰めて頑張ってたんだけど、それでも夜間発着禁止だから制約が多かったと思われます。
ところが、新空港は24時間だから、結構有力な物流拠点になります。貨物の場合は深夜着の方がいいよね、トラックで搬送するにしても深夜のほうが道がガラガラだし、動かしやすいもん。
Uberやる前もカフェ用の深夜配送やってたので、物流(ロジスティクス)というものに対する感度が上がってる、物流というのは人体における血液みたいなもので、皆が寝てる間にせっせと新陳代謝をやっている。
ハッキリいって、旅客の場合は、自分や友人が飛ぶ場合でないと、ほとんど何の関係もないです。だけど貨物や物流は、僕らの24時間の生活に直結しています。
つまり、海外通販の輸送時間が短くなるからすぐに届く(かもしれない)、また生鮮品なども24時間でやれるから鮮度が上がる、結果として僕らが美味しい、医療品や精密部品は旅客機の下に入れていたが、旅客機の空きが増えるので入れられるようになる。
あと結果として旅客の場合も預け入れ荷物の厳格度が甘くなるかもしれない。余裕ができるから。
新空港も貨物に照準を絞ってるところがあって、初期の頃は年間22-27万トン予定だけど、最終的には180万トンさばけるようにする予定だそうです。
これだけ物流キャパが増えるとなると、オーストラリアの航空物流はかなり変わるようにも思います。その意味で、ダメダメな新空港なんだけど、作る意味はあると思います。
あと、タフなバッパー諸君におかれては、深夜についてシャトルバスがお休みしてようが、のれなくてボケっと待とうが、空港泊ですらエンタメとして楽しめるタフなメンタルがあるので(そうでなければ世界一周など出来るわけがない)、そんなに心配してないです。
そもそもLCCだと、経由地で17時間待ちとかあるもんね。
ただ一括パックの利用者、つまりまだ海外なれしてない人は、多少高くてもシドニー空港がいいと思いますし、僕も新空港には対応しません。してもいいけど、追加で200くらいもらわないと無理かなあ。経費100ドル(高速、ガス代、駐車代、もろもろ)、それと3時間か4時間はかかるから手間賃として最低時給としても100ドルくらい。あわせて200ドル。でも、それだけ上積みするならシドニー空港発着の方を選んだ方がいいでしょ。
しかし、空港は出来たけど、アクセスがダメダメというのは、今に始まったことではないです。
過去を振り返れば、ぶははと笑ってしまうような話がたくさんありますからねー。インフラ作りはほんと駄目なんだよね。まあもとから地形的に難しいんだけど(海で限界を囲われ、全体からみたら中心部が異様に東端に偏ってるからどうしようもない)。
以下、流れで過去のインフラ行政のダメっぷりを思い出してみました。続きます。→シドニーインフラへっぽこ行政の歴史と思い出