前田くん国際写真展入選~レンブラント的撮影技法など

Pocket

このブログにも度々登場している前田くん(ワーホリ後、ビジネス学校に通いつつプロカメラマンとして稼働中)から、近時、「International Photography Awardsというアメリカの団体が毎年開催している写真コンテストで、 プロフェッショナルポートレート部門にて入選できました」という嬉しいメッセージがきました。

関連して、これ、どうやって撮ったの?とかやりとりしてたので、ご本人の許可を得て転載します。

どんな賞なの?

まず前田くんの応募作(入選作)は、冒頭の写真なんですけど、
A Portrait of Shenali Dona
にいくと、大会の公式ホームページでの紹介が見られます。

ところで、この大会ってなんなん?というと(以下、青文字が前田氏発言)

新たな才能を発掘する場として、(TO DISCOVER NEW AND EMERGING TALENT)、毎年世界各国からプロ•ノンプロ各部門で作品を募っているものです。なので、すでに世界的に名が知れ渡っている人、というよりは「次に来る」人たちがメインの賞だと言っていいと思います。
過去に日本人だと池谷友秀さん のような実力のあるフォトグラファーが受賞しています。(アシスタント時代、実は何度か撮影をお手伝いしたことがあります。ロン毛が印象的でした、、、と言ったら怒られそう笑)

ここのところ仕事に追われて賞レースから完全に離れていたのですが、ロックダウンの時期に自信のあった作品でエントリーしてみたところ、見込み通り引っかってくれました笑
商業写真でも突き詰めればアート性を持たせられるんだ、という意味で一つの布石がうてたかな、と思います。

こういうコンテストですけど、素人的にどう捉えていいのかよく分からん部分もあるのですよね。漫画や小説の賞なんかもそうだけど、聞いたこと無い賞がたくさんあって。 プロ的にはどういう感じで捉えているのかなーと。
もちろん営業目的(プロフに箔が付くとか)もあるだろう。だけど、実際の営業は口コミ(過去のクライアントが紹介してくれる)が大きな要素だろうし、それほどご利益があるのかどうか。
あるいは個人的な腕試しとか、そういう機会を持つことで自分に刺激を与えるとかいう内面的なものに意味があるのか。それともコンペを通じて他の写真家と繋がれるとか(あんまり繋がれるような気もしないのだが)。 そのあたりはどういうニュアンスなんかなー。

そうすねー おっしゃる通り、写真の世界のコンペも玉石混交ですねー
それこそ「ハッセルブラッド国際写真賞」といったノーベル賞レベルのものから(神レベル)、雑誌の企画のなんちゃら鉄道写真コンテストのようなほとんど趣味の世界のものまで限りなくありますねー。
その中で今回の賞は、プロが経歴に「書いても恥ずかしくない」レベルかな、とは思います。(あまりにマイナーなコンテストだと、逆に恥ずかしくて書けない。) 箔にはなるかな、と。
あとは腕試し的な意味、位置確認的な意味もありますね。実力の裏付けになるというか。人によって受け取り方は違うと思いますが、僕自身はもともとコンテストの受賞にそこまで意欲的なほうではないので(いつも気付くと締め切りが過ぎてるレベル笑)、「おお、やったー!」と天にも登れるほどのテンションまでではないですが笑、一応の満足は与えてくれる感じかな、と。
ただ、こちらもおっしゃる通り、この賞に限らずですが基本的に作品の受賞歴自体が仕事に直接つながる、ということはあまりないのかなー、と思います。

これ写真なの?肖像画じゃないの?
最初見たときには、これは肖像画じゃないのか?前田くんが後で説明してくれているように、レンブラントみたいな感じだなーと思ったのでした。
え、これ写真?どうやって撮るの?と

これはもともと選挙のキャンペーン用に撮ったものなのですが、そこで彼女の「意志の強さ、芯の強さ」を表現したいと考えました。彼女は目が印象的だったので、その目の強さを生かしたメリハリの効いた表現がしたいな、と考えました。 また、見た人が表情に集中できるよう、極力シンプルでストレートな表現をしようと心がけました。
で、それを表現するための「技法」の面では、 明暗のコントラストを効かせた表現という点で 17世紀のレンブラントという画家の表現に近いかな、と思います。 この写真、コントラストが高くなる方向性で作られているのですが、それはフォトショップのパラメーターをいじって後加工で作ったの「ではなく」(基本的にレタッチはすればするほど画質が劣化する)、撮影時点でほぼ作り上げたものです。

その主なポイントはライティングにあります。
1、被写体の比較的近めに光源(ライト)を置いて、光の当たっている部分と当たっていない部分の明暗の差が出るようにしました。逆に遠くに置くと、全体に光が回ってもう少し柔らかい印象になります。

2、その明暗の差をさらに強調するために、写真にギリギリ写っていない画面の右側近くに黒い板を置いて光を吸収し、暗い面がさらに暗くなるようにしました。(ここに仮に白い板(レフ板)を置くと、右側の暗い部分が明るくなって左右の明暗の差が少なくなり、絵のコントラストが下がってみえるようになります。) 撮影後の修正についてですが、レタッチらしいレタッチといえば、肌のニキビと白眼の血管を消したくらいです。あまり調味料こってりな商業的な仕上がりにはしたくなかったので過度な調整や味付けは控え、極力素材を生かす方向性で仕上げました。

なるほどねー、光源を近づけるとコントラストがくっきりする、見えないところに黒や白を置いて光を吸収させるか反射させる、そういう撮り方があるわけですね。やー、勉強になるわー。

ちなみに、前田くんが教えてくれたこの大会のトップ入選作品は、

だそうです。

このトップ作品、前田くんは「差を痛感した」とか謙虚なんだけど、僕から見てると、何がいいの?と。オバマは、なんか修正加工しすぎてる感があるし、アンジーのは単純にキモい感じがするんだけど、、と。

オバマとアンジーの写真。そうですねー 写真自体の価値とはちょっと話がズレるのですが、まず「そういう場」にいられる、そういう場を作れるいうこと自体がすごいです。
写真自体の話だと、オバマのポートレートに関して言えば、正直僕の第一印象は強く「なかった」です。最初オバマだとすら気付かなかったくらいです笑 でもこのポートレートが実は彼がホワイトハウスを去る直前のものだと知って、就任時の「これから感」みたいものとは真逆の感じがよく表現できてるなあ、と思いました。後加工がちょっと強すぎる感は否めないですが。
アンジーの方もやっぱり、写真を撮るためにアンジーにハチを這わすという「そういう設定」が作れたという部分が大きいのかなー、と。で、調べると、この作品にはAvedonという過去のレジェンド写真家の名作へのオマージュも含まれているようです。この部分も評価されたと思います。 個人的に好きか嫌いかでいえば、どちらもそこまで好きなタイプの写真ではないのですがね笑

さすがにそつなく合わせてくれて(苦労人だねえ)(笑)。
しかし、そうよね、まずこういう人達を撮れるというポジショニング、そういう場所に自分が行けることが第一ですよね。しかし、それは政治力とか営業力であって、純粋に写真力ではないじゃんって気もするのだけど、それも含めてなんでしょうかね。ようわからんです。

しかし、このコンテストの他のジャンル(たくさんある)のトップ作品を見てると、かーなりレベル高いですよね。あらゆる着想や技法など、何考えたらこんなものを創れるんだと感心してしまう。このレベルで戦ってるというのは、やっぱ凄いよなーと思うのでした。
また、オンラインサロンでもちょい話題になりましたけど、商業写真でも十分にアート表現は出来るんだってことがよく分かります。

Pocket